キャリア・教育

2021.04.13 19:00

事業は高い志を持ってやらなければいけない──孫正義流「成長」への心得

Tomohiro Ohsumi / Getty Images


まだまだ入り口なんです


野田さんは、昔と変わらず意気軒昂な孫さんに、その原動力は何なのか、と対談で問いかけました。
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「まさにそれこそ“志”だと思います。ちっぽけな目先の夢や即物的なものを追いかけたり、もし3年後や5年後のことばかりいつも考えたりしていたら、もうとっくに満ち足りてしまったかもしれません。ところが、昔、先生から教わった遠大な“志”を抱き続けてきましたから、まだまだ入り口なんです。率直に言えば、いまもって達成感はありません」

野田さんの問いかけに、こう答えた孫さんですが、ソフトバンクのグループ売り上げがすでに2兆5000億円を超えていた頃のことでした。

なぜ、ソフトバンクがこれほどまでに日本で存在感を持つ企業になれたのか。また、いまなお驚くほどアグレッシブにチャレンジを繰り返しているのか。それはすなわち、孫さんの“志”の高さに他ならないことを、私もこの対談で知りました。
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もし、孫さんが小さな個人の夢や、小さな志を持っているだけの人であったなら、もうとっくに引退していたかもしれません。それこそ個人資産を考えれば、何度でも人生を繰り返せるほどのものを持っているのですから。無理に働いたり、無理にチャレンジしたりすることなど、まったく必要ないのです。

しかし、そうはなっていない。孫さんが持っているのは、「志高く」という人生のテーマだからです。自身の志は、そんなちっぽけなものではないからです。

起業家や経営者がその成功を継続させられるかどうかを大きく左右するのは、この志の高さなのではないかと私は後に思うようになりました。誰のために仕事をしているのか。どれくらい多くの人を喜ばせようと考えているのか。それによって、当然、仕事も考え方も変わっていくからです。

それこそ、自分のために働いている経営者を、誰が応援したくなるでしょうか。世のため、人のためにという志にこそ、人はついていくのです。

そしてこれは、実は、一般のビジネスパーソンも同じだと思っています。上司はどんな人にチャンスを与えたいと考えるか。自分のことばかり考えている人と、高い志を持って仕事をしている人と、どちらを抜擢したいか。

もとより役職は目的ではありません。手段です。そう思えるだけの志があるかどうか。そして高い志を掲げれば、自分がいかにちっぽけな存在なのかに気づくことができます。

ならば、努力し、成長していくしかない。常に前を向けるのです。孫さんと野田さんに私が教えられた、忘れられないメッセージでした。

連載:上阪徹の名言百出
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文=上阪 徹

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