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朝日新聞外交専門記者

1960年代に英国の労働党政権で国防相を務めたデニス・W・ヒーリー(Photo by KEYSTONE-FRANCE/Gamma-Rapho via Getty Images)

最近、知り合いの安全保障専門家が米国のシンクタンク主催のシンポジウムに出席した。このご時世なので、オンラインでの会議だった。この専門家は「米中の仲もここまで悪化したか、と驚いた」と言って、携帯の画面を見せてくれた。

それは、シンポジウムに参加する際の登録フォームだった。そこには「Restricted Technologies Agreement」という文字が見えた。下の方に「Huawei Technologies Company」(中国通信機器最大手の華為技術・ファーウェイ)、「ZTE Corporation」(同じく、中国の大手通信機器メーカー)など5つの会社名が並んでいた。

要するに、シンポジウム参加のためにオンラインを接続するうえで、「自分のパソコンは、こうした会社の電気通信機器を使っていない」と誓約しろと迫る内容だった。そこには、「例示した5つの会社だけに限らない」という一文もあったので、もしかすると、TikTokのような中国企業が開発したアプリをダウンロードしたパソコンも接続不可なのかも知れない。

「黙っていればわからないんじゃないですか」と尋ねると、この専門家は「いやいや、万が一見つかったら大変ですよ。最悪の場合は米国に入れなくなるかもしれない」と言って首をすくめた。この専門家はたびたび、米国シンクタンクに招かれているが、こうした文言を見たの初めてだという。どうも4月1日をもって、新たに施行されたようだ。

これは、トランプ前政権が対中政策の一環として始めた「5Gクリーンネットワーク政策」の一つかもしれない。安全保障を確保する狙いから、中国などと関係がある通信企業などを締め出すという政策だ。

米政府は当時、日本や欧州などの同盟国に対し、「クリーンネットワーク以外は使わないようにできないか」と非公式に打診してきた。日本政府関係者は当時、「全世界の在外公館との連絡でも、一切中国の通信機器は使うな、と言われた。アフリカ諸国のように、中国から大規模な経済支援を受けている国家にある在外公館との連絡はどうすればいいのか。どの国も目をシロクロさせていた」とぼやいていた。

その後、バイデン政権が登場したが、米中対立の様相は厳しくなる一方のようだ。4月16日に開かれる日米首脳会談でも、バイデン大統領は菅義偉首相に対し、対中政策として「日本は何ができるのか、何をやってほしいのか」と迫ってくるだろう。でも、日本政府にはそれだけの覚悟を示す土台となる議論が全く起きていない。

国会では最近、政府の「ご飯論法」への批判が高まっている。ご存じの通り、「朝ご飯を食べたか」と聞かれて、「パンを食べてきただけなので、食べていない」と答えるという、一種のすり替え論法だ。きちんと議論する姿勢を示さない姿勢には大いに問題がある。

文=牧野愛博

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