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2021.04.19 07:00

共感が原動力。研究開発者がデザインリサーチャーになって気づいたこと

IDEO Tokyo デザイン・リサーチャー 髙取 孝光

デザインリサーチとは、人を深く観察することからインスピレーションを得て、ゼロからイチを生み出す手法であり、デザイン・シンキングの中心的要素だ。IDEO Tokyoには、多様なバックグラウンドをもつデザインリサーチャーが数名いる。

今回の記事を担当した髙取孝光は、もともと電子カルテなどの医療情報システムの研究や、人々の健康や美容に関わるシステムやサービスの研究開発に携わってきた。

科学的思考と論理的思考をベースとした課題解決と、デザイン・シンキングのアプローチの違いは何か。また、両者を組み合わせることのメリットは何か。彼女の体験を元にお伝えしたい。


 IDEO Tokyoのデザイン・リサーチャーたち


私は、メーカーの研究開発部に所属していた当時から、人々に真に求められるモノ・コトづくりをするための手法として、デザイン思考に関心があった。中長期研究テーマの策定や、部署横断プロジェクトで新たなシステム開発の要求定義をする際に有効だと思ったからだ。

ただ、中長期計画や市場動向など考慮すべき制約も多い中で、デザインリサーチをどのように研究開発業務にフィットさせるべきか分からず、活用に二の足を踏んだ覚えがある。その頃は、エビデンスとは、一人の人間を深く理解するよりも、大量のデータを元に考える方が信頼性があると思っていたし、医療やサイエンスのような既知の理論が多い分野において、何を目的に、どのように個人の声を反映すべきか分からなかった。

そんな私がIDEOでデザインリサーチャーとして取り組む中で、研究開発とデザインリサーチの関係性について気づいたことが4つある。(本稿で言う「研究開発」とは、科学的思考・手法をベースとした学術研究や研究開発活動全般を指すこととする)

1. 「仮説検証」のためか、「創発」のためか


まずは研究開発とデザインリサーチの特性について。「開発するための研究」と「デザインするためのリサーチ」と並べると同じようにも聞こえるが、そもそもの目的と強みが違う。

もちろん重なる部分はあるが、簡単にまとめるなら、研究開発は仮説検証に特化しているのに対し、デザインリサーチは仮説検証すべきテーマとその理由(極論、研究開発のリソースを投じるべき領域)の発見・設定に特化していると感じる。そして、その違いは「問い」の特性の違いからくるのだと思う。

一般的に、研究開発では「過去の研究からXXが示唆されるが、それは正しいだろうか?」という収束的かつ検証を促す問い(いわゆる仮説)から研究計画を立てる。検証を促す問いの強みは、それがもたらす厳密な実験デザインによる再現性と、明確な結果の良し悪しだ。

一方、IDEOに寄せられる相談では、課題そのものが不確定、あるいは、今ないものを創るために問いを立てるところから始めるケースが多い。そのため、デザインリサーチでは「どのようにしたら、XXできるだろうか?」という、仮説よりも何歩も手前で、拡散的な探索を促す問いからリサーチの設計を始める。こちらの強みは、あらゆる観点から問いを深掘りすることで、思いもよらなかったニーズやテーマがつながる発見があることだ。
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文=IDEO Tokyo デザイン・リサーチャー 髙取 孝光

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