3. 大事なのは、非合理性を汲むアプローチ
科学的手法の研究では、過去の文献や理論から仮説を立て、それに基づく一連の実験と分析を行うのが一般的だ。
デザインリサーチでも同様にデスクリサーチから仮説立てをするが、そこからメンバー同士でお互いが持つ仮説を共有し合い、「自分たちは何がわかっているつもりになっているか?」「何がわかっていないのか?」というバイアスを洗い出した上でデザインリサーチの設計に入る。関連する理論やフレームワークを理解した上で、一旦それらを横におき、実際のユーザーとの対話を通して仮説や問いをブラッシュアップしていく。
なぜ初めから学術的に立証されているものをベースにリサーチを設計しないか。それは、理論という限定的な枠にはめてしまうと、前述した拡散的な探索を困難にしてしまうということと、オープンなマインドでありのままのユーザーを知るためのデザインリサーチにおいて、理論や文献は先入観につながりかねないからだ。
また、人間の心は合理的ではなく、ニュアンスがひとつ違えば、自分自身でさえ想定していなかったような反応を示す。しかしフレームワークには、そういった細かなN=1レベルのコンテキストがない。「誰かのため」の「誰」を本当に知るためには、理論に当てはめるのではなく、まずは一つ一つのコンテキストがその人の心理や行動にどのような影響を及ぼしているか深く共感する必要がある。これが3つめの気付きだ。
そうしてデザインリサーチを通して得られた個々のコンテキストは、因果関係や時間軸で体系的に描くことができるフレームワークにマッピングすることで、リサーチの結果を論理的な構造としてセンスメイクすることが可能だ。
つまり、拡散的なデザインリサーチを起点とするからこそ得られる、既知の理論ではまだカバーされていないようなインサイトも含めて論理構造が作られる。すると、デザインリサーチから得られた結果を「仮説化」し、科学的思考を用いた仮説検証も可能になる。
なお、個々のコンテキストをフレームワークにマッピングする際に注意すべきは、フレームワークに当てはめることをゴールにするのではなく、あくまでもデザインリサーチで見た・感じたコンテクストを浮かび上がらせることができるフレームワークを用いることだ。