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2. デザインリサーチと仮説検証を掛け合わせる


2つめの気付きは、両者の関係性についてだ。研究開発者(学術研究者も含めて)は、単に新しいものを作ったり理論を解明したりしているわけではない。彼らは、「この技術や理論を必要とする、誰かの役に立ってほしい」と想いながら、日々実験と向き合っている。

一方、デザインリサーチャーは、まずその「誰か」の視点に立ち、彼ら・彼女らが日々何を思い、どんな経験や体験がその思いを形作っているのかを解き明かす。そして、何を・なぜ・どのように必要としているのかを、プロトタイピングとユーザーテストを繰り返すことで具体的なデザイン指標として明らかにする。つまり、デザインリサーチと研究開発はお互いを補完する関係にある。

例えば、より良いオンライン通販体験を考える際に、ユーザーへのインタビューを通じて、求められているのは「共感度の高い商品レビュー」だとわかったとする。レビュー投稿者が自分と同じライフステージ、あるいは趣味が近いと分かれば、その商品のユースケースが想像しやすく、安心感を得られるからだ。

ユーザーがレビューに求めるこうした機能的および心理的価値を提供するためには、どのような情報・画面設計が必要なのかをプロトタイピングとユーザーテストを通じて探り、コンセプトの軸を示すのが、一般的な、探求型デザインリサーチの範疇となる。



この時点で、このコンセプトはいくつかの仮定 (assumptions)の上に成り立っていることがわかる。例えば、「ユーザーはプラットフォームを信頼して自ら率先してレビューを投稿する」「一般ユーザーは最低限の説明のみでも他ユーザーの参考になるレビューが書ける」などの仮定は、今後サービスとして開発する上で満たしておくべき根本的な前提条件だ。

そして、どうしたらそれらの前提条件が満たせるか仮説検証し、実現性を高めることを得意とするのが、研究開発の領域だ。

例えば、「ユーザーはプラットフォームを信頼し、率先してレビューを投稿する」という仮定を、「投稿時のプライバシー設定(匿名・公開範囲など)の権限があることが投稿を促進する」という仮説(hypothesis)の形にし、実験計画を立て検証を行うことで明確な答えが得られる。もちろん、仮説検証のためにインタビューや観察といった定性的手法を用いることもできる。

ゆえに、どちらか一方の手法がより優れているという話ではない。これら二つのリサーチの違いが何に起因しているのかきちんと理解した上で組み合わせることが、最強のリサーチ術だと、私は考える。

文=IDEO Tokyo デザイン・リサーチャー 髙取 孝光

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