ビジネス

2021.04.12

世の中にない価値を生み出すことが大事。時代を先読みした「非効率」の追求

ブロスジャパン代表取締役の浜田謙

「発売当初は年間1000本くらいと思っていましたが、すでに3000本売れて好評をいただいています」

そう語るのは、眼鏡ブランド「BJ CLASSIC COLLECTION」を手がけるブロスジャパン代表取締役の浜田謙。今年4月に発売した眼鏡クリーナー「EYEWEAR WASH」が、レンズの洗浄とくもり止めの効果で注目されて、ヒットしているのだ。

実はこの商品、ブロスジャパンがブランド賞を獲得した「SMALL GIANTS AWARD 2019」で同じ壇上に登った木村石鹸工業と共同開発したもの。しかも、コロナ禍でマスク着用者が増え、メガネの汚れやくもりを抑えたいという需要が顕在化してから企画したのではない。

「世の中にないものをつくりませんか」

きっかけは上述のアワードだった。一切の妥協ない眼鏡づくりにこだわっている浜田は、非効率でも先代から受け継ぐ釜焚き製法で石鹸を手づくりしている木村石鹸工業に共感。「自分たちと同じ考えを持つ仲間だと感銘を受けたんです」。そして19年2月、商品開発の声をかけた。

企画したクリーナーは、眼鏡に付着した油膜を剥がす洗浄と、油膜を吹き付けることで効果を発揮するくもり止めの機能を両立させるという、これまでにない発想のもの。約1年かけて商品は完成し、当初は今冬の発売を考えていたが、コロナ禍が到来したため、急きょ販売することになった。世の中にないものを先回りして生み出したからこそ、顕在化した需要をスピーディにとらえることができたのだ。

浜田は新しい挑戦を続けている。今春には、国内眼鏡メーカーでは初とみられるアパレル業へ参入。メガネ拭き機能をもつTシャツや、太陽光を浴びるとレンズの色が変わるサングラスなどを発売した。そこでも、根幹にある考えは変わらない。

「どんなに非効率でお金がかかろうと、いいものをつくるために手間を惜しまない。世の中にない価値を生み出すことが大事なんです」

はまだ・けん◎1969年、京都府生まれ。日本ハムのブランドマネージャーを経て現職。自社ブランドを多数展開し、クラシック眼鏡ブームをけん引。世界展開を進める。2020年春にはアパレル業にも参入。「SMALL GIANTS AWARD 2019」ではブランド賞を受賞。

文=揚原安紗佳 写真=吉澤健太

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 11月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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