2021年版でビリオネアでなくなった最大の有名人は、リアリティ番組出身のスター、カイリー・ジェンナーだろう。ジェンナーとその抜け目ない一家は長年、彼女のコスメ企業、カイリー・コスメティクスの売り上げはバラ色だと吹聴していた。2020年初めに上場企業のコティがカイリー社の株式の51%を取得した際、同社の価値は12億ドル(約1320億円)と評価され、カイリーのビリオネアの地位も確認されたように思われていた。
ところが、その後コティの届け出によって、カイリー社の規模は一家がフォーブスなどに信じ込ませていたものの半分ほどにすぎないことが判明した。さらに、この1年は隔離生活で美容品販売にとって厳しい年になった影響も重なり、ジェンナーはビリオネアから脱落することになった。ただ、フォーブスはジェンナーの資産額を7億ドル(約770億円)と推定しており、現在23歳の彼女が今後再びリスト入りしてもおかしくない。
米国の著名人ではこのほか、ウェストバージニア州知事のジム・ジャスティスやヴィスタ・エクイティ・パートナーズ共同創業者のブライアン・シェスもリストから名前が消えた。ジャスティスの資産額は2018年以降、自身の石炭事業の衰退と歩を合わせて徐々に減っていたが、2020年にはコロナ禍による保有リゾートへの打撃が追い打ちをかけた。シェスは20年育ててきたビスタ社を去った際に少数株を手放した。
米国外では、2013年に資産額35億ドル(約3840億円)でアフリカ一の女性富豪になったイザベル・ドスサントスも、ビリオネアから脱落した。アンゴラの前大統領の娘であるドスサントスは国内の石油やダイヤモンドなどの産業に参入しようとする企業の株式を取得して影響力や富を拡大したが、新大統領や国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が公表した文書で広範な汚職が明らかになり、アンゴラのほかポルトガルやオランダの裁判所が資産の大半を凍結した。
一方、過去1年に亡くなったビリオネアも23人いる。米カジノ大手ラスベガス・サンズ創業者のシェルドン・アデルソン、韓国のサムスン電子会長の李健熙(イ・ゴンヒ)、世界一富裕なバンカーでブラジル一の富豪のジョゼフ・サフラ、シンガポールの海運王チャン・ユンチョンらだ。2020年版の番付でアデルソンの資産額は推定268億ドル(約2兆9400億円)だった。