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2021.04.08

アマゾン物流倉庫、組合結成か? 歴史的開票結果まで秒読み


投票の行方はまだわからないが、組合結成の動きが別の地域に波及する可能性は高い。

昨年には、ニューヨークやデトロイトのアマゾン従業員がコロナ禍での労働条件改善を訴えてストライキを行っている。ベッセマーの労働者の主張を代弁する「小売業・卸売業・デパート組合」は、全米各地の1000人のアマゾン従業員から意見聴取を行った。全米トラック運転手組合「チームスターズ」で対アマゾン全国キャンペーンを主導しているランディ・コーガンによれば、アマゾンの多くの従業員から労働条件と賃金に対する不満が寄せられているという。

「世界一の個人資産」は過酷な労働に支えられている?


2005年、プライム会員へのサービスとして100万種類の商品の2日以内の無料配送を始めてから、アマゾンはその配送スピードをさらに速めている。2019年には、競合するウォルマートやターゲットがアマゾンの配送スピードに追いついたこともあり、同日配達を新基準にするロジスティック能力獲得のために投資を行うと発表した。また、世界50の都市では、「Prime Now」の一環として2時間以内の無料配送を展開している。

これまでも従業員や政治家から職場環境について非難を受けてきたアマゾン。今回、コロナ禍下での購入者の自宅への配送と集荷により、健康と安全が脅かされているという従業員の不満を浴びることになった。ただし、コロナ禍によってアマゾンの純利益は210億ドルへと倍増し、ベゾスの資産も650億ドル増加し、現時点で世界一の個人資産1810億ドルに達したと言われる。従業員はその利益を還元できていないと主張している。

「アマゾンが、新型コロナに立ち向かう『団結』を果たせない危険は大いにある」と、D・A・デヴィッドソンの小売担当アナリスト、トム・フォートは言う。


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バーミンガム近郊にある人口2万7000の町ベッセマーで行われている組合結成運動は、生産性優先のノルマ、常時の監視態勢、わずかな休憩時間といった労働条件の改善を最大の目標にしている。むろん従業員は高い賃金や手当ても求めているが、その要求が前面に出ないのは、アマゾンが初任者の時給を国が定めた最低賃金よりはるかに高く、競合他社もしのぐ15ドルに定める戦略をとっているせいでもある。

ベッセマー発送センターの従業員の初任給は最低15.30ドルで、これはアラバマ州の最低賃金の2倍以上である。そのうえに、医療保険、眼科保険、歯科保険、確定拠出年金ばかりか、学費補助まで付いている。

「アマゾンはすでに、組合が要求していることをすべて提供しているといえる。業界一の給料、就業1日目から得られる包括的福利厚生、キャリアアップの機会、安全で現代的な労働環境などだ」と、アマゾンの広報担当者ヒーザー・ノックスは語っている。彼女が言うには、組合は労働者の多数意見を代弁しているわけではない、とのことだ。
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翻訳・編集=S.K.Y.パブリッシング

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