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2021.04.07

世界初の動物向け新型コロナワクチン、ミンク産業などが期待

Getty Images


動物向けワクチンと聞いて、多くの人が接種対象として思い浮かべるのはペットかもしれないが、このワクチンが真っ先に導入されるのは農業分野とみられる。中でもミンクは、毛皮目的で飼育されている個体数が他の種と比べて群を抜いて多く、しかも非常に新型コロナウイルスに感染しやすい特性がある。特に、多数の個体が密集したミンクの飼育環境では、状況が悪化し、感染が拡大する可能性が高まる。

世界中のミンクの飼育現場が、新型コロナウイルスのアウトブレイクに見舞われている。一部ではこれがさらに人間に感染した例もあり、危険な変異が生じる可能性が出ている。ヨーロッパでは、フランス、アイルランド、オランダ、デンマークが、感染拡大を食い止めるため、ミンクの殺処分に踏み切った。また、ポーランドでも殺処分が実施されるおそれがある。また、カナダや米国でも、アウトブレイクの事例が複数報告されている。

中でもデンマークの対応はとりわけ徹底的であり、他国の農業従事者からも危惧されている。デンマーク首相は2020年11月4日、同国で飼育されている1700万匹強のミンクについて、すべて殺処分とするよう命じた。ミンクから検出された新型コロナウイルスの変異株が、将来のワクチンの有効性を脅かしかねないということが理由だった。

しかし、1000万匹程度の殺処分が終わった段階で、全国でのミンクの一斉殺処分命令には法的根拠がなかったことを政府が認め、農業担当相は11月18日に引責辞任した。また、デンマーク保険省は11月19日、危険度が高いこの変異株は9月15日以降報告されておらず、根絶された可能性が高いと発表した。

さらに11月下旬には、埋立作業の不備から、殺処分で埋められた大量のミンクの死骸が腐敗ガスで地上に浮き上がり、地元の水資源への悪影響が懸念される事態が発生した。

動物を感染から守るとされるワクチンは、新型コロナウイルスの感染拡大に揺れる毛皮産業から大いに歓迎されるだろう。特にミンクに関しては、2大生産国のオランダとデンマークで飼育が休止に追い込まれ、このまま恒久的に復活しない可能性も出てきている。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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