テクノロジー

2021.04.08 10:00

川越、日本初「電気ボンネットバス」導入の理由

谷島 賢 イーグルバス代表取締役社長

昨年6月19日、埼玉県川越市の観光地をめぐる路線バス「小江戸巡回バス」で、日本初となる電気ボンネットバスの運行が開始した。手がけたのはイーグルバス。交通を起点としたまちづくりを手がける「SMALL GIANTS AWARD 2018」ローカルヒーロー賞の受賞企業だ。

同社は「小江戸巡回バス」を1995年から運行し、97年にはディーゼル型ボンネットバスを導入。江戸時代の城下町の姿が現存する「小江戸」の成長を牽引してきた。

「日本初」というめずらしさから電気バスそのものに目が行きがちだが、注目すべきは同社の狙いだ。社長の谷島賢は、「川越を国際的な観光都市に発展させるプロジェクトの一環。企画から運行開始まで2年半をかけました」と話す。

中国製の電気バスに独自の改造を加え、1台あたり4500万円を投入。排ガスゼロで静粛性に優れるという環境面だけでなく、クラシックなデザインに仕上げて、川越の「蔵の街並み」と調和させた。さらに、エンターテインメント機能として照明も取り入れ、夜は車体下とボンネットフード内をライトアップして街並みを彩る。

「新しい技術を取り入れて、サービス向上することがひとつの狙いです」。また谷島は、「いまのバス業界をいかに支えていくかという実験でもあるんです」という。日本のバス業界は、少子高齢化に伴い運転手の人材不足が続いている。

「ただでさえ人数が少ない運転手さんが、この先どんどん定年退職していけば、公共交通を支えられなくなります。自動運転の実現はまだ先の話。それまでを『つなぐ』役割が必要なんです」

導入した電気バスは完全オートマチック仕様。ギアチェンジの操作が不要で、長時間運転の負担が大幅に軽減される。さらに、安全装置として衝突防止システムも搭載した。

「これなら高齢の運転手さんが、もう少し定年延長して続けられるかもしれない。川越の観光もバス業界も厳しい状況が続いていますが、その両面で新しい電気バスが果たす役割は大きいんです」


やじま・まさる◎1954年、埼玉県生まれ。78年成蹊大学法学部卒業後、東急観光に入社。81年にイーグルバス入社。2000年より現職。英ウェールズ大学でMBA、埼玉大学で理学工学博士。「SMALL GIANTS AWARD 2018」でローカルヒーロー賞を受賞。

文=眞鍋 武 写真=佐々木 康

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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