最大のメガディール(大型案件)をまとめたのは、3月にシリーズDラウンドで5億ドルを調達した遠隔診療・オンライン薬局のロー(Ro)。これにより、創業3年半の同社の評価額は50億ドルに膨らんだ。
デジタルヘルス分野のベンチャー投資額は3月の最終2週にはそれぞれ10億ドルを超えており、このペースが続けば2021年通年の額は前年の140億ドルあまりを大幅に上回る見通しだ。
ロックヘルスのメーガン・ツワイグ最高執行責任者(COO)は「加速しているのは資金調達だけではない。より迅速で大規模な導入を可能にする方向にエコシステムが移行したと実感している」と話す。同社が10年前に集計を始めた時には、この分野のベンチャー投資は通年で11億ドルにとどまっていた。
1〜3月期のディール数は147件、平均調達額は4590万ドルだった。ディール数は前年同期の110件から増えているが、とくに目立つのは1億ドル以上のメガディールが25件と多かったことだ。ツワイグはこれらの企業について「製品が市場の求めるものであることを証明している」と説明する。
「投資家がしようとしているのは、(技術の)導入を加速させてシェアを一気に奪い、(そのスタートアップが)現在標準になっている医療企業と競合していける勢いを与えることだ」(ツワイグ)
大型案件は主に、ローのようなオンデマンドの医療サービスと、研究開発への技術の応用の2分野が占めた。後者の一社、創薬のインシトロ(Insitro)は2番目に大きい4億ドルを調達した。
一方、エグジット(投資回収)ペースも速まってきている。背景にあるのが、みずからは事業を営まない特別買収目的会社(SPAC)を通じた上場ブームだ。D2C(direct-to-consumer)医療サービスのヒムズ・アンド・ハーズ(Hims & Hers)も1月にこの「空箱」方式で上場し、16億ドルの評価額を得ている。