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被災3県の地元紙が「おみやげ袋」として防災知見を広める

今からちょうど5年前、2016年4月14日。熊本地方を大きな地震が襲った。震度7が2回、長い期間発生し続けた余震により、住宅地、阿蘇山近辺や熊本のシンボルでもある熊本城など広範囲に被害をもたらした。インフラの寸断によって多くの避難生活者を出したのは記憶に新しい。

熊本の地元紙、熊本日日新聞社は地震が発生した4月14日にあわせ、熊本城下の城彩苑 桜小路で「防災知見が新聞風に読めるおみやげ袋」を配布する(買い物をされた際の買い物袋として配布、無くなり次第終了) 。これは「おみやげ防災」と呼ばれ、福島民報社、神戸新聞社、熊本日日新聞社の3社によるプロジェクトだ。

神戸新聞社は阪神淡路大震災の1月17日、福島民報社は東日本大震災の3月11日にそれぞれ地元で配布した。そして4月14日には熊本日日新聞が熊本版を配布。防災知見が詰まったおみやげ袋を手にした人たちが、ある人は出張で、またある人は観光で持ち帰り、被災県の防災知見が広く伝播される目的を持つ。先行した2県では、用意した1000部強が1時間ほどでなくなった。

このプロジェクトの起点を担ったのは福島民報社だが、3県のそれぞれが経験から得た知見を外に伝えることに迷いはなく、おみやげの袋にするアイデアや、掲載する紙面の内容など、その連携はスムーズで足並みは揃っていたという。

3県の知見の説得力


大きな災害を経験した3県の地元新聞社の手による紙袋は、それぞれ災害から学んだ有用な内容が「紙面」に詰め込まれている。福島民報は「風水害」への対応、神戸新聞は「ローリングストック」、そして熊本日日新聞は「避難所生活」に関する内容だ。

福島民報社の宗像恒成は、風水害への対応が書かれた袋の意味について教えてくれた。

「福島県は、東日本大震災はもちろん、その後の原発問題、2019年の台風19号(のちに東日本台風と名がつく)の豪雨水災害など大きな災害と向き合い続けてきています。今までは、ニュースを県民のみなさんや、『おくる福島民報』という震災後に県外へ避難されている方に新聞を届けるなど、地元メディアとしての役割を果たしてきましたが、震災から10年が経過し、これからは復興だけでなく福島県民が経験したことや知り得たことを県内だけでなく広く外に発信することが重要と考えたのです」

福島民報社の宗像
福島民報社 東京支社 営業部 宗像恒成

誰もが知っている情報ではなく、体験したからこそ話せる知見を知ってもらうことが大事だという。風水害の情報は、国や自治体から対策や被害状況など多くの情報が出ており、福島民報としては、「誰もが知っている同じ内容ではなく、その場にいた人がどういう思いで、どういう行動をしたかというストレートニュースを伝えるべき」だとする。

震災を経て10年、今何の情報が必要なのかということが経験により分かっているからこその視点ではないだろうか。

文=坂元耕二

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