ビジネス

2021.04.07

ユニコーンをクビになった男の逆襲。新会社で人事制度に革命を起こす

パーカー・コンラッド


リップリングで同じ轍は踏まない


コンラッドは、ニューヨーク・シティのアッパー・イースト・サイドにある裕福な家庭で育った。父は老舗法律事務所「デービス・ポーク・アンド・ウォードウェル」のシニア・パートナー、母は「ラウズ不動産」の一族の出身で、環境保護の非営利団体を設立している。名門私立男子校カレッジエイト・スクール時代には、2年近くかけてシー・スネイルという魚を神経生物学の観点から研究し、全米ウェスティングハウス秀才コンテストで3位に入賞して賞金2万ドルを獲得したこともある。

ハーバード大学で化学学士号を取得して03年に卒業。バイオテクノロジーの「アムジェン」などで働いたコンラッドは、24歳で精巣がんを経験。10年に成立した「医療制度改革法(通称オバマケア)」に触発されて、13年にゼネフィッツを立ち上げた。

だが、15年秋に問題が発覚、16年初めには辞任した。

「ゼネフィッツで一連のコンプライアンス違反があったのは明らかです。リップリングで同じ轍を踏まないよう、十二分に注意しています」


コンプライアンス違反や社内風紀の乱れが発覚するや、コンラッド(左)の“お目付け役”として、ペイパルのCOO(最高執行責任者)を務めたデビッド・サックス(右)が経営陣に送り込まれ、やがてコンラッドは辞任した。

コンラッドは、ゼネフィッツの最大の問題は極めて短期間に成長したことにあり、エンジニアリングの能力が追い付かず、手作業による業務を余儀なくされた結果エラーが発生したのだと考えている。

彼は、リップリングの強みは、自動的な従業員名簿の追加や削除だけでなく、新人が必要とするソフトウェア・ツールやアプリ、作業グループも自動的に管理し、昇格やグループの変更、退職に合わせてすべてを更新してくれる点にあるという。


リップリングの使用画面。PCでもスマートフォンでも使用が可能。ユーザーはゲームアプリのインストールと同じくらい容易に、人事関連のさまざまな業務を進めることができる。

中小企業の場合、こうした事務作業の効率化で幹部社員の手間やコストを大きく削減することができる。しかも、市場規模はきわめて大きいのだ。リップリングの幹部は、リップリングが提供するソフトウェアすべてを加えた人事・給与管理ソフト市場規模は、ID管理システムも含めると、世界全体で総額350億ドル以上になるとみている。
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文=エイミー・フェルドマン 写真=ティモシー・アーチボルド 翻訳=フォーブス ジャパン編集部 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN No.078 2021年2月号(2020/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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