例えば、二酸化炭素の86倍も強力だとされる温室効果ガスのメタンガスは、世界全体の排出量のうち70%が、肉用牛が放出するものだという。専門家の中には、気候を巡る破滅的な状況を回避するには、世界の赤身肉の消費量を90%削減する必要があると指摘する人たちもいる。
新技術で問題に対応
だが、幸いなことに動物性タンパク質に代わる持続可能な食品は、次々と開発されている。「代替タンパク質」には植物由来のものと、食品技術によって新たに生み出されたものがある。
活況を呈するこの代替タンパク質業界への昨年第1四半期の投資額は、世界全体で9億3000万ドル(約1030億円)にのぼり、前年の8億2400万ドルからさらに増加した。投資先の大半は米国の企業で、出資者にはビル・ゲイツをはじめ、ケイティ・ペリー、セリーナ・ウィリアムズといった著名人も含まれている。
「ミートレス・マフィア」たち
彼らを「マフィア」と呼んでは、少々語弊があるかもしれない。以下に紹介する4人は、最も素晴らしく、思慮深い人たちだ。ただ、より持続可能な食料システムの実現に向かって道を切り開く彼らは、真の敵に対しては言葉を選ばず、遠慮なくものを言う人たちだ。
・インポッシブル・フーズ/パトリック・ブラウン
インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)のパトリック・ブラウン最高経営責任者(CEO)は、競争相手として気に掛けるのはずばり、「牛肉産業だけ」だと明言する。食肉と競合する製品を作っている人たちは、すべて協力者だという。
同社は大豆レグヘモグロビンのDNAと、遺伝子を組み換えた酵母を使い、ヘム分子を発酵させることに成功した。すでに広く知られるようになった「インポッシブル・バーガー」を2016年に発売。牛肉に近い見た目と香り、味で肉食の人も菜食の人も同様に驚かせた。