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6. 資本主義はコミュニティを構築する。コミュニティにならない限り、企業は機能しない。多くの人々にとって、職場(昨今では労働システムと呼ぶほうが正確だ)はもっとも重要なコミュニティである。

たしかにコミュニティと感じられるものが失われれば、企業は個別の契約が詰め込まれた単なる箱と化す。優れた企業は、個々の社員との関係のなかで信頼や忠誠心を育んで、彼らを共通の利害のために働く有能な人材へと変える。

いまあげた主張は、資本主義にできること、そして資本主義のあるべき姿を説明したものだ。

創造力、選択と責任、モラルとコミュニティは、いずれも資本主義がもたらす成果だ。

ただし厄介なことに、それらは資本主義の燃料でもある。燃料がなければ、資本主義社会は逃げ遅れた者を悪魔が捕まえる無法地帯と化す。

資本主義自体に何とかしてもらおうと思っても無理な話だ。資本主義はしょせん道具であり、道具は人によって活用されたり誤用されたりする。やはり、人生や人生の目的とは別物なのだ。

われわれが抱える真の問題


経済学者のケインズは、1930年に発表した「われわれの孫世代の経済的可能性」という論文で、哲学に関心を示しつつ、先に語ったすべてを予見していた。

われわれは新たな病に苦しめられている。その病名をまだ聞いたことがない読者もいるだろうが、この数年で何度も耳にすることになるだろう。その病とは「テクノロジーによる失業」だ。これは、労働力の新たな使いみちを見つけるよりも速いペースで、労働を効率化する手段が発見されるがために失業が生じることを意味する。(中略)つまり未来を見据えると、経済問題は人類にとって永遠の問題ではないのだ。

ケインズはさらに、経済問題が解決してしまうと、人類は従来の目的を奪われ、われわれが抱える真の問題と向き合わざるをえなくなると続ける。

それはどうすれば賢明な人生を送れるか、心地よく健やかな人生を送れるかという問題で、その解はきっと経済学がもたらしてくれるという。

ケインズは、経済問題の解決が万人に歓迎されるとは思っていない。 

「ものがあふれる時代の到来に恐れを抱かない国や人はいない、と私は考える」と彼は言う。だが最終的には、次のように述べている。

「社会において、富の蓄積の重要度がそれほど高くなくなれば、道徳規範が大幅に変わることになるであろう。(中略)お金を求める動機について、正しい価値観で評価することができるようになるはずだ」

要は何も変わらないのだ。資本主義がどれだけ成功したところで、「生きる理由」の完全な答えは決して与えてもらえない。そうすると、人間に秘められた可能性と限界の両方を考慮に入れた優れた経営理論や、コストだけでなく本当に価値のあるものも計算に入れる新しい経済学に、解決策を求めようとするかもしれない。

だがいずれの改革も、仮にいつか実現するとしても、自分自身そして自分以外の人が、人生に何を求めているかをもっと深く理解しない限りは起こらないだろう。結局は、人生に対する認識を改める必要があるということだ。お金に対して正当な位置づけを与え、不当に重きを置かないようにするのだ。

『THE HUNGRY SPIRIT これからの生き方と働き方』(かんき出版)

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