風の時代を制すのは誰? 「アートxウェルネス」で高付加価値をデザインする

新たな感覚を呼び起こし、インスピレーションへと誘うドイツ人アーティスト、レギーネ・シューマンのライトアート(Courtesy of Taguchi Fine Art)


アート的視点でイノベーションを起こす


「アート」とは、アーティストという自由な表現を追求する人が、社会で起きている事象や問題を人々に提起したり、まだ見ぬ新しい価値観を提示するものです。

ポップアートで有名なアンディ・ウォーホルは、マリリン・モンローやコカコーラなどのイメージを大量に作品化し、60年代の表面的な消費社会に渦巻く人々の欲望を炙り出しました。村上隆は、日本画やオタク文化を取り入れた「スーパーフラット」の概念で、日本の消費文化独特の空虚感や、社会の階級制のなさを表現しています。ルイ・ヴィトンとのコラボレーションでは、ブランドのイメージ価値を大きく高め、売り上げに貢献しています。

このようなアート的視点は、自社サービスの開発や向上に、次の3つの力をもたらすと私は考えています。


変化し続ける時間の痕跡をナフタリンで封じ込め、その結晶を今に置くことで重ねてきた歴史に想いを馳せる宮永愛子の「鍵」

1. 問題提起力 

VUCAの激動の時代は、もはや一年先のことは誰にもわからない。中長期の計画を立てることがとても難しい時代です。

そのような中、アーティストのように世の中の問題、課題を見つけ出す問題提起力と、ネガティブを解決してニュートラルな状態に戻し、さらにはポシティブに変えていく問題解決力が必要とされています。

AがだめならBと、しなやかに、柔軟性とスピード感を持って舵を切れる組織や人が、風の時代を制します。

2. 先を予測する直感力

問題提起には、世の中で起きていることを見出す眼力、ある意味ジャーナリズムに近いクリティカルシンキングが必要です。目の前で起こるさまざまな事象を五感、さらには第六感も駆使して見つめ、本質を掴む。その際に、感覚力を鈍らせる最大の敵が、自分の持つ偏見や好き嫌い、思い込みといったいわゆる煩悩です。

日頃から自分を煩悩がないゼロな状態に近づけ、感度を豊かにしておき、自分の目の前のコトや世の中を観察して眼力を養う。

そうすると、直感力が磨かれ、起きている事象の原因や結末が見えてきて、半年先くらいまでは予測がつくようになるでしょう。

3. 「旬」を捉える力

世の中の事象を自由で柔軟な視点で見渡すアーティストの姿勢は、「旬」を捉える一助にもなります。

風の時代は、これまでの学歴やキャリアなど、過去はもはや評価の対象でなく、それよりも「今、何をしているか」が問われます。

読者の皆さまの中には、輝かしい学歴をお持ちの方も多いでしょう。でも今の2、30代にとって、それは彼らが生まれたころの話。そんな昔の学歴なんて、彼らにとっては「化石」です。

過去の栄光にしがみつかず、より柔軟でかろやかなマインドで、社会の課題やユーザーの潜在的なニーズに対して大きな問いを立てるアート的な姿勢が、「旬」を捉える力を養います。
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文=山田 理絵

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