YCは、2005年にボストンで始まったスタートアップ・アクセラレータの元祖。投資とともに、3カ月間にわたるスタートアップ育成プログラムを毎年夏期と冬期に開催している。これまでにAirbnb、DoorDash、Stripe、Dropboxなどの名だたるスタートアップを輩出し、巣立った2800以上のスタートアップの時価総額合計は、日本最大の企業価値を持つトヨタの時価総額をも上回る30兆円以上。
始まった当初はわずか8社だったが、今回のデモデイに参加したスタートアップの数は319社。応募が1万6000社あったとのことなので、合格率はわずか2%の狭き門だ。ちなみにスタンフォード大学MBAの合格率は約6%と言われるので、YCに合格するのはそれよりも3倍難しいということになる。
エコシステムのグローバル化を実感
デモデイでは、そんな狭き門をくぐってきた319のスタートアップが、朝の9時から夕方5時まで、1社1分ずつの持ち時間でZoomピッチを行う。これを視聴する投資家は2600以上、選りすぐりのシードステージのスタートアップと、実績のある選ばれた投資家だけが参加を許される、スタートアップ界隈では最大のイベントだ。
YCに参加するのはシリコンバレーのスタートアップだけにとどまらない。むしろシリコンバレーに拠点を置くスタートアップの比率は、年々低下してきている。昨年からはコロナ禍の影響でプログラムが全てリモートになったこともあり、海外からの参加も急増。今回のバッチでは、遂にスタートアップの50%が海外からの参加となった。参加国は41カ国。43社を送り出したインドを筆頭に、アジア、南米、欧州、さらにアフリカからも6社が参加していた。
今回のYCのデモデイを観察していてあらためて感じたのは、スタートアップ・エコシステムがますますグローバル化してきているということだ。
一例を挙げてみたい。「Rappi」という南米コロンビアのスタートアップをご存知だろうか? ソフトバンクが10億ドルを出資したことで話題になったので、名前を聞いたことがある人もいるかもしれない。Rappiは、南米でフードや日用品のデリバリーを提供する会社として2016年にYCから巣立っている。