ポラリス・プロジェクトは2018年の推定で、米国内にはこうした性的マッサージ店が少なくとも9000軒あるとした。だが、実際の数はこの倍以上であることはほぼ間違いない。こうしたマッサージ店のレビューサイト「ラブマップス(RubMaps)」には、米国内2万5000軒以上の店が掲載されている。
この業界に関する確固としたデータはないが、専門家や支援団体によれば、メディアでは性的人身売買の問題が取り上げられることが多いものの、性的マッサージ店は低スキルの移民にとって、低賃金のネイルサロンや飲食店で働くよりも良い暮らしを得る手段となっている。ニューヨークとロサンゼルスの116軒を対象に行われた2019年の調査では、対象となった女性の83%が、性的サービスを強要されたわけではないと答えた。
草の根運動団体「紅鴬歌(Red Canary Song)」は、セックスワーカーを中心としたアジア系移民を支援している。その中心的メンバーで、自身もニューヨークでセックスワーカーとして働くウーによれば、マッサージ店員のすべてが性的サービスに従事するわけではなく、従事している人も、多くは生活のために自らこの道を選んでいる。
名字を伏せた上で取材に応じたウーは、「マッサージ業界で働く人は、生きるため、自分と家族の生活のためにベストを尽くしており、そうした働き方は邪魔されないべきだ」と主張。「この業界から救出される必要などない。必要なのは、殺される心配をせずに仕事ができることだ」と語った。
こうした女性らは、母国に仕送りを送るためや、子どもの学費を稼ぐため、あるいは、密入国の手配により生じた借金を返済するために働いている。ネイルサロンやウエイトレスの仕事で得られる賃金は月200~2000ドルだが、違法マッサージの仕事では、良いときで1日200ドル、週1000ドルが稼げるという。
人身売買の被害者や、マッサージ店での就労を理由に逮捕された女性たちに無料法務サービスを提供する団体「アンチ・トラフィッキング・イニシアチブ」の幹部エイミー・シェによると、同団体のクライアント1200人以上(多くはアジア系の不法移民だ)のうち、5人に1人は人身売買の被害に遭ったり、何らかの形で仕事を強要されたりしたと話している。