ジェンダーギャップの解消は135年後? 他の先進国に遅れる日本に求められる視点

「ジェンダーギャップ・レポート2021」で、日本は156カ国中120位だった(Shutterstock)

世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ・レポート2021」が発表されました。同フォーラム日本代表の江田麻季子氏がレポート内の4つの分野から、特に「政治参画」と「経済」の分野に焦点を当て、ギャップ解消に求められる視点を示します。


例年、世界中で注目される、世界経済フォーラム「ジェンダーギャップ・レポート」。

2021年版では、引き続き、政治、経済の分野における「ジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)」に大きな課題がある事に加え、コロナ禍の影響もあり、「グローバル・ジェンダー・ギャップ(世界男女格差)」の解消には、「135年後」を要すると予想されています。これは、昨年の99.5年から、さらに「36年」が加わった事になります。

すべての国でジェンダー・ギャップがあるということが、ジェンダーギャップは私たちの社会経済活動が長年にわたり積み上げてきた慣習の結果として存在しており、何もしないで自然に解消されることではありません。日本では引き続きジェンダーギャップ解消のスピードが他の先進国に比べ遅い状況です。

しかしながら長期的に組織として強くなるためには多様性が不可欠であるという認識もリーダー達はようやく持ち始めています。日本で「どのようにギャップを解消するのか」という議論を活性化するためにも、「ジェンダーギャップ・レポート」の4つの分野、「政治参画、経済、教育、医療へのアクセス」の中でも全体の引き上げに欠かす事のできない「政治参画」、また社会の原動力となる「経済」の視点から、どのような取り組みがされているのか見てみます。

「政治参画」 プロセスに透明性を


日本政府は、2020年12月に「第五次男女共同参画基本計画」により、施策の基本的方向性、具体的取り組みを定めました。特に注目したいのは、政治・政策決定過程への女性の参画拡大、雇用分野でのポジティブ・アクションの推進等による女性の参画拡大です。

この計画では、政党に対し、女性候補者の割合を高めることを要請するとされています。この取り組みにより本当に政治への女性の参画が図られるかについては、賛否両論はあるものの、クオータ制等を早急に導入すべきではないかという議論もされていると聞きます。

そもそも、男性中心の政治の分野に女性が参画するには、参入障壁が多々あるように見受けられます。国会運営、選挙活動、地元での活動等のありかたについても考える必要があり、こういった活動の決定プロセスの透明化も求められます。プロセスが見えないことで「これまでのやり方」や構造が守られ、結果としてこれまで参加がしにくかった女性や幅広い層から政治への流入を阻んでいる可能性があります。

有権者が選挙を通じて形作っている政治ですから私たち一人ひとりが意識的な行動をとることで変革は起こせます。ただ女性が立候補することさえ見えない力で阻まれるようだと、なかなか女性の参画はすすみません。

したがって決定プロセスの透明化がすすみ、幅広い経験を持った人がより参加できるような環境づくりが急務です。また中央の政治のみならず、地方自治体や市町村などでも女性をはじめ幅広い人達の政治参加がより進むよう、議会や選挙の運営方法のさらなる工夫を進めてほしいと思います。

江田麻季子
日本は他の先進国に比べて、ジェンダーギャップがまだ残っている(イメージ: IMF)
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文=江田麻季子 世界経済フォーラム日本代表

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