ジェンダーギャップの解消は135年後? 他の先進国に遅れる日本に求められる視点

「ジェンダーギャップ・レポート2021」で、日本は156カ国中120位だった(Shutterstock)


「経済的機会」 多様性の向上がもたらすこと


経済分野における女性の活躍促進もまだまだジェンダーギャップは大きいのが現状です。役員や管理職等の意思決定過程への女性の登用は十分でなく、グローバルに見てもいまだ大きく遅れているのが実態です。

「第五次男女共同参画基本計画」では、有価証券報告書等における開示の在り方を含め、コーポレートガバナンスの改善に向けてジェンダーの視点も踏まえた検討を行うとされています。この点に関しては、2021年6月から適用されるコーポレート・ガバナンスコードの改訂により、管理職への女性や外国人の登用等について数値目標の設定や、達成状況の公表等を促すことが議論されています。同時に、管理職・幹部への女性登用のみならず、どのレベルであっても、継続的にスキル・キャリアアップを図れるようにワークライフバランスを整えるための方策は必要で、関連の施策では徐々に取り組みが進められています。

このように制度面からは取り組みが行われている一方、女性の幹部・管理職への登用について、女性登用に代表される、社内での多様性向上の取り組みがどのように業績向上に結び付いていくか、先進的な事例とともにデータで示されることが必至です。

また、女性活躍は目的ではなく手段であるという考えも重要です。DX促進と同様に、それ自体が目的になるのではなく、事業を見直しイノベーションを促進するために、女性活用をはじめとする多様性の向上が必要であると頭を切り替える必要があるのです。

無報酬の仕事の負担軽減


政治や経済におけるジェンダーギャップの解消には、その大前提に育児や介護など家庭における無報酬の仕事の負担をより男女公平にしていくことがあります。男性の育児休暇の取得をはじめ企業や政治における働き方の変革など、もうすでに議論は活発ではありますが、スピード感をもって実行に移し、こういう制度をすべての人が気持ちよく使えるようにすることが求められます。

仕事への考え方は世代間のギャップもあり、ますます多種多様になっています。こうした背景を踏まえて変化を起こす事は、画一的な働き方・キャリアトラックではなく、柔軟で流動的な雇用市場を創出することにもつながります。こうした点を踏まえると、働き方改革・企業文化の転換も不可欠です。

このようにジェンダーギャップの解消のためには、その解消を目指すという強い決意と社会全体の構造変革が求められます。今回のコロナ禍では、女性の方が男性にくらべ経済的な痛手を受けており、世界経済フォーラム「ジェンダーギャップ・レポート2021」で、日本は156カ国中120位というランキングの発表もありました。

日本におけるジェンダー・ギャップの解消へ向けた決意が多くのリーダーにより共有され、その努力が政治や経済の現場で変わったという実感に繋がる事がまず第一。そしてその結果として、こうしたグローバルな報告書にその変化が反映される日が近い事を期待しています。


(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=江田麻季子 世界経済フォーラム日本代表

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