ビジネス

2021.04.06

編集部イチオシ、スモールジャイアンツ特別賞受賞企業13社

三鷹光器はエネルギー領域にも進出し、 太陽光を熱エネルギーに変えて利用する蓄熱システムの研究開発も推進している。


SECOND LAUNCH


NAKAMURA-TECH 中村製作所


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本社:三重県四日市市
設立:1969年
従業員数:55名(パート含む)
代表:山添卓也 

「空気以外なんでも削る」の精神で独自商材を開発

「空気以外なんでも削る」というチャレンジ精神をもち、素材や形状を問わず、難易度の高い複雑な切削加工を手がけている。製造業や航空宇宙領域の部品加工だけでなく、自社製品も積極的に開発。

2018年には、1000分の1mm単位の精密加工で鍋と蓋の隙間を埋め、極限まで気密性を高めた土鍋「best pot(ベストポット)」を生み出した。素材のうま味を逃さない無水調理が可能で、火を止めても2時間、60度の熱を維持するため、蓄熱のみで調理することができる。

もともと大手メーカーの下請けだったが、リーマンショック時に取引の縮小を余儀なくされ、売り上げは9割減少。苦労する父の姿を見てきた4代目の現社長は、下請け工場からの脱却に舵を切り、自らの技術力で新たな価値を生み出す現在のビジネスモデルに至った。

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「なんでも削る」と既成概念を取っ払うことで、技術を応用できる幅が拡大。自社ブランドの印鑑「SAMURA-IN(サムライン)」では、難削材であるチタンを採用し、従来にはない堅牢で上質な印鑑を実現した。

REASONS FOR SELECTION

事業承継を経て、特定の大手企業に依存する下請けからビジネスモデル転換を図り、自社の技術力を生かしたユニークな製品を多数手がけていることを評価した。


SUMIRON スミロン


本社:大阪府大阪市天王寺区
設立:1972年
従業員数:140名
代表:春山英二

フィルムの力で医療・介護現場を救う

工業用の表面保護フィルムを中心に事業を展開。もともとはキッチンのシンク向けなどの金属建材用に保護フィルムを提供していたが、マイクロメートルレベルの薄膜を多層コーティングできる独自の技術力を生かして、国内では大手企業1社が独占していた自動車領域に進出。現在は市場シェア約50%を誇る。

新たな事業の柱をつくるため、医療・介護分野にも進出。使用済みのオムツを密閉パックにする製品「エコムシュウ」を2006年に開発した。一度密着させれば剥がれなくなる特殊フィルムによって、菌やウイルス、臭いを完全にシャットアウトし、現場の衛生を保つ。

当初は価格が課題で売れなかったが、改良を重ねたことで18年に花開き、これまでに国内500カ所2000台を納入した。最近では、イタリアやドバイなど海外で実績を積み上げている。

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自動車やスマートフォンなど、多様な領域で使用される表面保護フィルム。スミロンは、警察が犯罪捜査の際に、犯人の足跡(下足痕)をとるために使うフィルムでも納入件数トップシェアを誇る。

REASONS FOR SELECTION

既存ビジネスに甘んじることなく、新たな領域に挑戦。10年以上の歳月をかけて研究開発を重ね、自社商品を改良し続け、実績にこぎつけたチャレンジ精神を評価した。


CUTTING EDGE


ABEL アベル


本社:大阪府八尾市
設立:1965年
従業員数:30名(正社員のみ)
代表:居相浩介

ステンレスの可能性を広める「アベルブラック」

ステンレスの表面加工処理を手がける技術屋。電解発色による独自の表面処理技術で開発した黒いステンレス「アベルブラック」を製造・販売している。表面皮膜が1ミクロン以下で、曲げ加工しても変色しない、剥がれない、裏表どこでも色が均一、光が乱反射しないなど、同製品は塗装やメッキと比べて装飾性・機能性に優れている。

「アベルブラック」の技術は先代が開発し、IT企業で営業スキルを磨いた2代目の現社長が市場に広めた。当初は、建築業界向けに提供していたが、近年では高級自動車の窓枠やハイブランド店舗の内外装、インテリアなど、装飾性を生かした領域で使用されるケースが増えている。グローバル展開にも積極的で、香港からの受注が増えているほか、デザイン性が重視されるヨーロッパの建築業界も視野に入れている。

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社名のアベルは最高を意味するAceとフランス語の「美」であるBelの造語。アベルブラックは「最高に美しい黒」として、高い装飾性が要求される領域で利用される。写真は高級車レクサスに使用されたドアモール。

REASONS FOR SELECTION

「アベルブラック」という唯一の技術を開発し、装飾性の高さを生かして、これまで取引のなかった領域にも進出。ステンレスの新たな可能性を見いだした点を評価した。
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文=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN 5月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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