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2021.04.06

編集部イチオシ、スモールジャイアンツ特別賞受賞企業13社

三鷹光器はエネルギー領域にも進出し、 太陽光を熱エネルギーに変えて利用する蓄熱システムの研究開発も推進している。


LOCAL HERO


UEYAMA ORIMONO 植山織物


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本社:兵庫県多可郡
設立:1951年
従業員数:40名
代表:植山展行

200年の伝統「播州織」を現代にアップデート

江戸時代から200年以上の歴史をもつ綿織物「播州織」を主業とし、地域最大規模の織布工場をもつ。年代物の伝統的な織機から最先端の織機まで100台以上を所有し、年間260万mの生地を生み出している。

兵庫県・北播磨地域では、播州織が地域の産業出荷額の3割を占めているが、時代の流れとともに全体の生産量は全盛期の10分の1に落ち込み、就業人口も激減。受注生産が中心の企業では厳しい経営環境が続いている。

しかし、植山織物は、分業制が主流の繊維業界のなかで、1980年代から自社で商品企画からデザイン、製造、販売まで一貫して手がけており、中国や米国、タイ、フランスなどに海外拠点も保有。世界20カ国以上と取引し、近年ではチェックやストライプなど、播州織の特徴を生かしたシャツなどアパレルの最終商品も展開している。

先代の急逝を機に、2011年に25歳の若さで家業を承継した現社長の植山展行は、業務のデジタル化にも力を注ぐ。受発注や在庫管理をウェブシステム化させたほか、播州産地内の協業先と連携して、生地の染色や収縮率、寸法の安定率などのデータを共有するプラットフォームを構築。自社だけではなく、地域全体での生産性の向上に取り組んでいる。

また、IoT機器を活用して、機械の回転数やエアー圧力といった製織技術のノウハウのデータ化を推進。高齢化に伴い職人が少なくなるなかで、技術継承にも対応しようとしている。

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日本製の先染めシャツは、7〜8割の商品に播州織の生地が採用されているといわれている。100台以上の織機をもつ植山織物では、年間でシャツに換算して約130万着分の生地を生産している。

REASONS FOR SELECTION

播州織の担い手が減るなか、企画から最終商品までを展開し、海外でも活躍。自社が生き残るだけでなく、産地内の企業と連携したコミュニテ ィをつくり、産業全体を活性化させようとしている点を評価した。


ISHIZAKA 石坂産業


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本社:埼玉県入間郡三芳町
設立:1967年
従業員数:約180名
代表:石坂典子

産廃処理業会の革命児

産業廃棄物処理のイメージを覆そうとしている変革者。1999年、ダイオキシンに関するテレビの誤報道によって、悲運にも地域から批判にさらされたことをきっかけに、「脱・産廃屋」を掲げる。以来、約20年にわたって、就業環境の改善や、地域の景観を配慮した施設への転換、社員の意識改革などに取り組んできた。

ゴミを出さない産廃処理を目指して、焼却処理を廃止。廃棄物混じりの土を改良土にする資源化技術など、徹底した分別と独自技術によって、産廃物の減量化・再資源化率は98%を実現した。また地域環境に配慮して、同社の処理施設では、電動式の重機の配備や壁面緑化型の防音壁の設置など、騒音や粉塵を施設外に漏らさない工夫を徹底。その結果、地域住民から「地域に誇れる企業」と言われる存在になり、事業も継続して成長している。

近年では、「サーキュラー(循環型)エコノミー」をテーマとした地域モデルの実装に、研究機関や企業とオープンイノベーション型で取り組んでいる。地元・美芳町では、里山保全プロジェクトを推進。東京ドーム4個分の敷地からなるサステナブルフィールド「三富今昔村」を環境教育の場として一般に開放するほか、地産地消の農業「石坂オーガニックファーム」などの活動に力を注ぐ。

産業廃棄物処理を持続可能な社会に必要な「資源循環産業」に昇華させた同社には、地元住民や学生だけでなく、企業や研究者、政府関係者など、国内外から年間で数万人が見学・視察に訪れる。産廃処理を起点とした環境学習の場としても活用されており、人材育成にも貢献している。

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徹底したゴミの分別だけでなく、電動式の重機や太陽光発電を取り入れてCO2の排出を削減したり、雨水を用いて工場に出入りするトラックのタイヤを洗浄したりと、環境への配慮には余念がない。

REASONS FOR SELECTION

3Kのイメージがつきまとう産業廃棄物処理を「資源循環産業」と捉えて改善を重ね、地域から愛される存在に。さらに、里山保全や環境教育など全方位で持続可能な社会の構築に取り組んでいる点を評価した。
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文=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN 5月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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