フォルクスワーゲン、EV転向はどこまで本気なのか?

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独自動車大手のフォルクスワーゲンは、2015年に発覚したディーゼル車の排ガス不正問題、いわゆる「ディーゼルゲート」により、企業イメージの刷新を迫られた。企業の社会的責任の原則を大きく損なった同社は、売り上げこそ低下しなかったものの、しばらくの間、人々の敵としてみなされた。

そこでフォルクスワーゲンの経営陣は、電気自動車(EV)への方針転換を決めた。その裏にあったのは、EVの波に乗れなければ「ノキアと同じ運命をたどる」という焦りだ。

同社は今年からの排ガス基準変更による罰金を避けるため、昨年にはハイブリッド車に別れを告げ、EV累計生産台数の目標を前倒しして、2023年末までに100万台、2025年末までに150万台を生産するとした。

同社はまた、欧州最大のEV工場を建設。大胆なバッテリー投資計画も打ち出し、メーカー6社と充電スタンドの国際ネットワークに対して350億ユーロ(約4兆6000億円)を投じる供給契約を締結した。

先行するテスラの技術に追いつけないフォルクスワーゲンの目標は、世界2位のEVメーカーになることだ。収益は新型コロナウイルス流行の影響により37%低下したものの、株価はEV計画の発表を受けて1年前から倍増した。

フォルクスワーゲンのEV販売台数は昨年、前年比3倍の23万台にまで増加。一部アナリストは、同社のEV製造コストが2025年までにガソリン車やディーゼル車を下回ると見ている。

では、フォルクスワーゲンのこうした「開眼」に欠けているものは何だろうか? 同社が真の意味でEVへの本気度を示すためには、根本的な変化が必要となる。それは、ディーゼルエンジン車とガソリンエンジン車の製造の完全な停止だ。

テスラがトップに立っている理由は、研究開発能力が他社に勝っているだけでなく、大気を汚染するエンジンを搭載する車を作るつもりは全くもってないことにある。テスラは品質に加え、顧客満足度の面でも業界のリーダーなのだ。テスラ車のオーナーは、同社が掲げる大胆かつ信頼できる目標のファンであり、自分がその達成に寄与していると考えている。

つまり、自動車メーカーの中で突出するためには、ディーゼル車やガソリン車の製造をやめる必要がある。EVに関する「悟り」に至ったとうたうフォルクスワーゲンや他のメーカーは、近い将来EVへの完全移行を果たさない限り会社の本質は変わらず、排ガスの罰金を支払うことを選び、長期的な公益よりも短期的な利益を優先するようなメーカーから脱却できないだろう。

編集=遠藤宗生

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