ビジネス

2021.04.05

絶滅危惧の技術が市場を無限に!オキサイドが世界シェアNo.1をつかんだ「日本の光」

オキサイド代表取締役社長の古川保典。後ろに見えるのが単結晶の育成装置だ。オキサイドは、現存するほとんどの単結晶育成技術を保有する世界唯一の企業。 出来上がった単結晶は、手のひらほどの大きさで数百万円の値が付くものもあり、価値が高い。


光学単結晶を使った部品、その部品を組み込んだ装置の製造も手がけるようになったのは、東京エレクトロンの元副社長で、ふるさと山梨の産業活性化にも尽力した故・風間善樹の影響でもある。

“古川さん、会社を大きくしようと思ったら結晶だけやっていたらダメだよ。装置もやりなさい”そのアドバイスに従っての装置への進出は、業績に加え、結晶の品質も飛躍的に向上させた。

結晶がよくないと部品がよくならない、部品がよくないと装置がよくならない。社内からも厳しい指摘を受け、身をもって理解した。手厳しいフィードバックによって品質はますます向上する。

現在、海外売上比率は66%。オキサイドほどの光学単結晶をつくれる企業は、国外にも存在しない。どうしても高品質の光学単結晶が欲しい人は自力でオキサイドを探し出し、コンタクトを取ってくる。だから地方でもやっていける。こうして世界中から注目される唯一無二の存在になれたのは、確固たる技術があるからだ。

「国の研究所の技術をもとにしたのがよかったと思っています。大学は、わりとトレンドに合わせて研究テーマを変えています。そうしないと研究資金が得られないからです。でも国の研究所では、引退するまで自分のテーマを追いかけられるし、学生がいないので何でも自分でやるしかなくて、だから、技術の深掘りができました」

技術があるから、新たな用途は顧客が見つけてくれる。市場も広げてくれる。自動運転、5G、量子コンピューティング、固体電池など、新しいアプリケーションが出てくると、新しい素材というニーズが生まれ、顧客の側が「こんなものを開発できないか」と、新しいテーマをもってきてくれる。

酸化物を意味する社名は、光学分野に限らず、多方面で求められる高品質な結晶を提供していこうという思いを込めて付けた。オキサイドはいま、光の時代のその先を照らそうとしている。





古川保典◎1959年、福島県会津坂下町生まれ。筑波大学大学院理工学研究科工学博士。1983年、日立金属に入社。スタンフォード大学応用物理研究所客員研究員を経て96年、物質・材料研究機構に入社。2000年10月、オキサイドを設立。

オキサイド◎2000年設立。半導体検査装置やPET装置などの基板材料として使用される光学単結晶の開発・製造や、単結晶を利用したデバイスやモジュール、レーザー製品を展開。2020年2月期の売上高は30億6500万円、従業員数は129人、海外売上比率は66%。

文=片瀬京子 写真= 佐々木 康 ヘアメイク=内藤 歩

この記事は 「Forbes JAPAN No.081 2021年5月号(2021/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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