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第四次産業革命センター長 須賀千鶴

「世界を変えるのはルールメーカーでもあります」。屈託のない笑顔を浮かべてそう語るのは、世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター長を務める須賀千鶴だ。同センターは、ダボス会議を開催する世界経済フォーラムと日本政府(経済産業省)、シンクタンクのアジア・パシフィック・イニシアティブの三組織によって設立された。

「第四次産業革命のテクノロジーは、人間が今まで独占的に担っていた機能を代替するようになっていきます。人間がずっとやってきた意思決定、何が良くて何が駄目なのかという価値判断も含めて、機械的になされるようになる。その時に、人間の居場所はどこにあるのかというのが大きな問いです。

そして、新しい社会に向かっていく過程で、人間が手放してよいものと、決して譲ってはいけないものは何なのか。人間の長い歴史の中でこの時期に、人間社会全体で答えを見出していく問いです」

その問いの答えが出そろわないうちに、新しいテクノロジーの社会実装は世界中で進んでいる。そのルール形成について、さまざまな社会の主体、アクター、マルチステークホルダーの合意づくりを主導しているのが第四次産業革命センターだ。世界13カ国に拠点をもち、年々拡大している。「官民連携版の国際機関のネットワーク」と言える。 

日本センターでは、第四次産業革命にまつわる課題について、「ヘルスケア」「スマートシティ」「モビリティ」など各分野の専門家集団が相互に連携し、グローバル最先端の議論と常に同期しながら、デジタル時代の規制・ルールを設計する政策提言やプロジェクトを実施している。

このマルチステークホルダーによる議論の場の必要性は以前から指摘されてきたが、特に、新型コロナウイルス危機で、デジタル化が人々の生活に与える大きな影響が広く認知されると同時に、課題の深刻さも増してきたと須賀は説明する。

さらに、このような議論の場では、「富の再分配」が共通の価値観になっているという。

「お金はもはや希少資源ではありません。今までの市場経済では、希少資源の中でも最たる希少資源であったお金をめぐって、投資を呼び込もうとみんなで争う、競争するというのが基本的な設計でしたが、むしろよほど希少なのは、そのお金を使ってうまく社会の役にたてられる人や組織です。根本的な問題は資本主義の限界にあります」。

コロナ後の社会において、世界経済フォーラムが提唱する「ザ・グレート・リセット」が想定する最大のリセットは、資本主義だ。「これからの社会は、何を大事だと私たちが考え、社会を再設計し、リセットするのか。一部の成功した勝者が「この成功は自分の能力と努力の賜物だ」と富を独占して威張るような社会は、取り返しのつかない格差と分断をもたらします。デジタル化による利益をひと握りの誰かが独占するのではなく、デジタル時代の国際公共財づくりに使うべきです」。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=平岩亨

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