ニューヨークのブルックリンのアート集団「MSCHF」によると、ナイキは彼らが2019年に発売した「ジーザス・シューズ」に対しては、何の行動も起こさなかったという。しかし、ナイキは、今回の「サタン・シューズ」に関し、MSCHFを相手取った商標権侵害の訴訟を起こした。
MSCHFは4月1日の声明で「一つのものを検閲し、別のものを検閲しないナイキとは何者なのか?」と述べ、サタンはジーザスと同様に美術史の一部だという持論を展開した。
MSCHFの声明は、裁判所がサタン・シューズの販売差し止めを命じた後に出されたものだ。しかし、MSCHFによると、このシューズはほぼ完売しており、顧客に出荷されているため、差し止め命令は必要ないという。
このシューズは666足限定で発売され、リル・ナズ・Xは当初、最後の1足をプレゼントするファンイベントの開催を計画していた。しかし、MSCHFによると、裁判所の命令を受けてイベントは延期されたという。
ナイキは今週初めの声明で、「このシューズは当社の承認や認可を得ずに生産されたものであり、当社はこのプロジェクトと一切関係がない」と述べていた。
MSCHFは声明で、「私たちは表現の自由を強く信じている。私たちや他のアーティストたちが、表現活動を続けられることほど重要なことはないと考えている」と述べた。彼らはさらに「ナイキや裁判所と協力し、迅速にこの訴訟を解決することを楽しみにしている」と述べた。
このシューズは、リル・ナズ・X の楽曲「モンテロ(コール・ミー・バイ・ユア・ネーム)」のミュージックビデオのタイアップとして製作された。ビデオの中で、リル・ナズ・Xは地獄で悪魔とたわむれている。
この楽曲は、自身が同性愛者であることを公言する21歳のリル・ナズ・X(本名モンテロ・ラマー・ヒル)が、自らの性的アイデンティティを受け入れてデートを楽しむ内容となっている。
サタン・シューズは、ナイキの「エアマックス97」に改変を加えたもので、靴底には人間の血の一滴が封入され、魔除けの印であるペンタグラムのペンダントがついている。さらに、ミッドソールにはサタンが天国から落ちる聖書の一節にちなんで「ルカ10:18」と書かれている。
このミュージックビデオはその後、激しい論争を引き起こしたが、特にこの曲が悪魔崇拝のイメージを使用していることを不服とする保守派の宗教グループが抗議の声をあげている。