一方、アメリカのほとんどの駐車メーターシステムは、不具合があってもそこに電話番号は書いてないか、書いてあってもほとんど留守番電話につながるなどして、いま、ここで払って次の場所に移動したい人間にとって何の意味もない。
以前、高速道路のETCシステムが州によってばらばらで、レンタカーを借りる際に苦労するエピソードを紹介して、日本のETCシステムの利便性をコラムで書いたが、今回も趣旨は全く同じだ。
駐車場で困る私を案内したシカゴの少年
筆者はかつて、アメリカ陸運局の料金支払いの精算機をつくるメーカーの事情を聞いたことがある。公平な入札にこだわるあまり、製品の技術的な評価よりも、運営母体の企業の大きさやら、プレゼンテーションの美しさが優先するという話だった。
そして、やはり選挙民の手前、入札相手は地元の業者が優先されるので、外国の優秀な製品が導入されることは少ないということだった。
一方で、民間は違う。ホテルの駐車システムなどはかなり進んでいる。
入庫するときに切符を機械で受け取るが、出て行くときには、事前に施設内のパーキングメーターの精算機で支払いを済ませておけば、車が出庫ゲートに近くなると自動的にゲートが開くという芸当をする。ほおっと思って機械を眺めると、日本製で「アマノ」と社名が書いてあって納得する。
役所が管轄する路上や駐車ビルのシステムは市町村の数ほど種類が存在して不便な一方、民間のシステムはそれほど種類がなく、アメリカのどの場所で停めてもアマノの製品で楽々という不思議な現象が起こる。
そうかと思えば、かつて筆者がMLBのシカゴ・カブスの本拠地、リグレー・フィールド球場に車で出かけ、停めるところが見つからず往生したときに、ふらふらと走る私を1人の少年が呼び止めた。
「駐車場あり」と手書きで書いた段ボールを見せて、「こっちだ、こっちだ」と私の車の前を50メートルも走って誘導し、あるアパートの前の居住者駐車場の空きスペースに駐車させ、「25ドルだ」と言って料金を請求したことがあった。
その空きスペースが、本当に時間駐車に提供されているものなのかどうかわかるものをなにかを見せてほしいと私は求めたが、少年はキョトンとして、僕が信じられないのかと私の目を見つめ返すばかりだった。
このやりとりこそシカゴ流だと思い、私はトラブル覚悟で金を払って車を停め、球場に向かったのは、いまとなっては良い思い出だ。
テクノロジーを合理的だと押し売りされることが多い昨今、これ以上はないくらいのアナログなやり方が、テクノロジーを超える利便性を示した時、ほっとすることがあるのは、単なる懐古趣味ばかりとは言えまい。
連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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