アートをもつという自己表現。NYでサブスクを展開する社長の視点


──5月には「アートレンタルもしくは購入していただいたら、売り上げの一部でマスクを購入し、医療従事者を支援している非営利団体に寄付します」というキャンペーンも行ったとか。

そもそもがスタートアップなので余裕はないのですが(笑)、こういう稀な状況下で自分たちに何ができるかを考え、スタッフ全員で発案しました。これはお客様側だけでなく、アーティスト側からも非常に共感していただけました。しかもCurinaで扱っているアーティスト以外の方からも、「自分の作品を寄付したい」「自分の売り上げを寄付したいから作品を載せたい」という話がきたんです。

みんな、コロナという特殊な状況下で「自分たちには何ができるか?」というのをすごく考えた時期だったと思います。人によってはデモに参加したりするわけですが、家にいてもできることというと、寄付活動だよねと。アメリカは寄付が日常的ですから、自然な流れでした。


Curinaでは無料のコンサルティングセッションを設け、顧客の家のレイアウトや家具の色合いなどから作品を勧めている

もうひとつ大きかったのが、5月に起きた「Black Lives Matter(BLM)運動」です。私はタイムズスクエアの近くに住んでいるのですが、家の周りでも暴動が起きていたり、お店が壊されていたりして……。アメリカでいまだ虐げられている黒人とアートを絡めて何ができるのかを思案し、それに類したコンテンツをインスタグラムで発信しました。

実際、黒人に限らず、BIPOC(Black, Indigenous and People of Color:黒人、先住民、有色人種)の手による商品を買う、BIPOCのオーナーを支援する、という人が非常に増えています。「アートを買うなら黒人やヒスパニック、アジア系のアーティストの作品を買おう」という流れで、弊社のサービスを始めた方も多かった。ちなみに私自身もアジア人なので、応援しようと思ってくださった方が少なくなかったかもしれません。

──今回投資された方々は、ベネッセホールディングス取締役の福武英明氏、クラウドサークスCEOの吉田浩一郎氏、CAMPFIRE社長の家入一真氏らが名を連ねています。彼らはCurinaの何に可能性や面白さを感じてくれたと思いますか。

今回の調達でお会いした方々は、すでにアートを収集されていたり、アート活動をサポートしていたりする人が多かったんです。しかもアートの単純な売買より、アーティストを発掘してスポットライトを当てていきたいという思いが強かった。

Curinaでは、教育プログラムとしてアーティストに関する情報や「アートはどういう風に買えばいいのか」というコンテンツも発信しているので、次世代の若いアートコレクターの育成や、新しい市場の開拓・拡大に可能性を感じてくださったのかなと思います。あとは、私が日本ではなく、最初からアメリカで勝負しているところに多少なりともガッツを感じていただけたのではないでしょうか(笑)。
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インタビュー・構成=堀 香織

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