高齢者施設のコロナ対策、鬱や認知機能低下などの代償も

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筆者はここ数カ月、長期介護施設の運営者や入居者の家族から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが入居者にもたらしている間接的な被害をめぐる話を聞かされてきた。新型コロナウイルス感染症で体調を悪くしたり死亡したりした人だけでなく、パンデミックに起因する社会的孤立により、生活の質が深刻な影響を受けている人たちもいるという。

最近になってようやく、高齢者に大きな被害をもたらす影響が詳しくわかり始めている。そうした高齢者たちは、感染は免れているかもしれないが、にもかかわらず苦しい状況に置かれているのだ。

コネチカット州公衆衛生当局の依頼により、調査会社マセマティカ(Mathematica)が実施した重要な最新調査では、パンデミック初期の数カ月間で、介護施設の入居者が、鬱や、相当程度の体重減少、失禁、認知機能の低下を経験するケースが大幅に増えたことが明らかになった。さらに衝撃的な事実は、新型コロナウイルスに感染していない入居者でも、そうした症状が高確率で見られたことだ。

ロックダウン


なぜだろうか? どうやら、孤立が大きな要因になっているようだ。高齢者における孤独の危険性は、パンデミックのはるか以前からよく知られていた。しかし新型コロナウイルスの流行により、政府の規制当局や長期介護施設の運営者は、厳しい判断を余儀なくされた。

トランプ政権は2020年3月、新型コロナウイルスの猛烈な広がりを抑えるために、介護施設のロックダウンに踏み切った。介護施設は、自治体の食事会や活動を中止し、家族の訪問も数カ月にわたって禁止した。これにより、入居者たちのほかの人との接触は大きく制限された。この戦略は、入居者の感染率を下げたかもしれない。だが、その代償はきわめて大きかった。

2020年夏には、非営利組織アルタラム(Altarum)の「高齢者ケア改善プログラム」で実施された入居者調査により、新型コロナウイルス感染症に起因する孤独の深刻さが浮き彫りになった。そして今回、マセマティカの調査チームは、学会誌「Journal of The American Medical Directors Association」に掲載された論文のなかで、入居者の健康と幸福がどのように悪化したか、その定量化を行っている。
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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