篠田:1番に思い浮かんだのは、とにかく自分を盛らず、嘘をつかないということです。人脈作りというと、自分を大きく見せたり、できることばかり並べるようなイメージがある方もいるかもしれませんが、それはネットワークを作る上では要りません。むしろ、できないこと言った方がいいくらいです。助けてもらいたいから、人脈が必要なんです。
人は機械ではないので、これができるといった性能だけで繋がるのではありません。自分を魅せるというよりは、よりソフトな好きなこと嫌なこととか、気になることを話して、自分を知ってもらえるようにする。比重はそちらに乗せておくくらいでちょうどいいですよね。
村上:自己開示とも言えますね。
──この話に関連して、先ほど村上さんがおっしゃっていた、米国リンクトイン代表と対面されたときは、どのような空気感だったのでしょうか?
村上:それこそ最初の30分くらいは雑談でした。好きなものベースで話をしていましたね。
でもJeffには面白いところが1つあって。誰に対しても、ドリームジョブ(夢の仕事)は何かということを聞く癖があるんです。僕はそんなことを一度も聞かれたことないので面食らいました。この質問の意図から、彼が自分の経験をシェアしてくれるオチが付いているんですが(笑)。
あとは時計の話もしました。当時すごく憧れていた時計があって、彼はそれを腕にはめていたんです。少しマニアックなものなんですが、それが最初からずっと気になって仕方なくて。ちょっとその時計の話をしていい? と聞いてしまったほどです。
──そういう小さな会話から信頼が生まれてそこから広がっていくんですね。
村上:この本では、人脈という言葉はあえて使わずにネットワーキングとか、ネットワークという言葉を使っています。
人脈というと、どうしても異業種交流会とか、名刺交換のようなイメージになるからです。本来は自分のことをわかってくれるアライ(支援者)を増やしながら、お互い助け合うのがネットワークだと思うんですよね。
コミュニティの中で信頼貯金を貯めていく感覚です。私も本を出す上で、信頼貯金を少しずつ引き出していると思っています。ただこれは僕が世の中に伝えたいから、少し手伝ってもらいたいなと思っているんですね。こういったフェアな関係性がネットワークの中には必要なじゃないかと思います。
誰もができる、ネットワークを広げるコツ
篠田:その観点で1つ是非お話ししておきたいのが、組織というものに所属したときの内にこもる引力について。これって本当にすごいんですよ。そういった閉塞的な職場しか経験したことがないと、ここで言うネットワークというのはイメージしづらい可能性があるなと思います。
例えばコロナ前ですが、大企業のオープンイノベーションについてのカンファレンスでお話しさせていただく機会がありました。オープンと言うだけあって、外と繋がるのが鍵ですよね。
しかし皆さんに、お昼ご飯って会社の人と食べてますか? と質問するとはっとするんです。大会社だと毎日部署の同じ人と、同じ時間に同じ店に食べにいくというルーティーンがバシッと出来上がりますそれに疑問も持てないんですよ。