ファイザー製コロナワクチン「12~15歳の有効性100%」が意味すること

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ファイザーとドイツのバイオ医薬品企業ビオンテックは3月31日、共同開発した新型コロナウイルスワクチンの臨床試験(治験)を12〜15歳を対象に行った結果、100%の有効性が確認されたと発表した。

両社は数週間後までに米国と欧州で、接種の対象年齢を12歳以上に引き下げるための緊急使用許可を申請する方針。各国が学校の新学期を迎える秋までにワクチンへのアクセスを拡大させることに向けた、大きな一歩といえそうだ。現在までに使用が認められているワクチンは、10代後半から成人が対象となっている。

ビオンテックのウグル・サヒンCEOは、初期の結果は「このワクチンが特に子供たちに効果的だということ」を示唆しており、英国で最初に確認された変異株「B.1.1.7」の感染が拡大する中、「勇気づけられる結果だ」とコメント。子供たちが「通常の学校生活に戻り、友人や家族と一緒に過ごせるようになる」ための助けになるだろうと述べている。

各社も接種対象の拡大へ


ファイザーの発表文によると、米国で12〜15歳の2260人のボランティアを対象に実施した小規模の治験は現時点でピアレビューが終了していないものの、ワクチンを接種したグループの中に、新型コロナウイルスに感染した人はいなかったという。

同社によれば、このワクチンは12〜15歳のグループに対しても安全性が高く、免疫反応は16〜25歳のグループよりも高いことが確認された。副反応は16〜25歳のグループと同様、「接種を受けた部位の痛み、発熱、倦怠感、悪寒」などが報告されている。

また、ファイザーは25日には、生後6カ月~11歳を対象としたワクチンの臨床試験を開始したことを明らかにしている。米モデルナも12歳までの子供への有効性を調べる治験を複数実施するなど、成人のワクチン接種が進む中、各社はより若い年齢層を対象とした治験を進めている。

子供たちの接種の重要性


新型コロナウイルスに感染した子供や10代の若者が重症化することはまれだとされているが、若くても感染のリスクはある。米紙ニューヨーク・タイムズによると、感染して死亡した子供は、米国では227人にのぼっている。また、感染した子供がより重症化リスクの高い成人にうつす危険性もある。

子供たちがワクチンの接種を受けることは、感染リスクを低減させ、感染者数を抑制し、流行を収束に向かわせることに役立つだろう。結果としてそれは、秋の新学期の学校再開に向けた準備を、より円滑に進められるということにもなる。

ただ、子供たちへの接種の承認は、学校の再開を巡り、また新たな問題を生む可能性がある。各州はポリオやはしかなどと同じように、登校前のワクチン接種を義務付けることができる。つまり、ワクチンに懐疑的な親たちの反発が予想されるということだ。

テネシーやペンシルベニアなど、すでに各家庭の選択に任せる方針を明らかにしている州がある一方で、一部の州の学区は、義務化の意向を示している。子供たちへの使用が承認されれば、また新たな論争が起きることになりそうだ。

編集=木内涼子

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