経年で粘着力アップ、ウルトラ接着剤は「人骨」がヒント。宇宙での活用も

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ビルを支えるコンクリート梁にしても、内装の飾り付けで用いる小さな粘着テープにしても、建築素材の耐久性は古くなると低下すると考えがちだ。時の経過とともに弱くなるというこの常識を打ち砕く新素材がシカゴ大学で開発された。

時間の経過、振動とともに増す粘着力


この新しいタイプのジェルは、時間の経過につれて粘着力が増す。しかも、振動や圧力が加わるほど、強くなるというのだ。人の骨は、しだいに増える体重の負荷に応じて強くなる。この仕組みに着想を得たという。

「ほかの素材はいずれも、振動を受けると弱くなっていきます」と筆頭研究者のアーロン・エッサー・カーン氏は語る。「私たちの研究では、この弱くなっていく過程を初めて覆し、素材が機械的振動によって自己強化できることを示しました」

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「圧電効果」を世界初の特殊応用


骨構造が自然から授かった適応能力をヒントに、エッサー・カーン氏らのチームはまったく新しい接着剤の開発に取り組んだ。もうひとつ特筆すべきことは、この接着剤が「圧電効果」として知られる作用を用いていることだ。素材や装置などに機械的な圧力や振動を与え、その運動が電荷に変換されることによって強度が上がる。これまで、靴、道路、コンピューターのキーボードなどに使われている技術だが、シカゴ大学のチームによると、このような特殊な応用は世界初だという。

まず、圧電効果によって発生する電荷を使って素材に化学反応を起こし、強化するというアイディアから研究をスタート。次に、さまざまな化学反応式を用いて実験を重ね、狙いどおりの特性を備えたジェルの製造を試みた。多数の化学物質を試した結果、完璧な配合にたどりつく。最終的に出来上がったのは、チオール-エン反応器、酸化亜鉛、圧電粒子を混ぜたポリマージェルである。

振動で強くなるこの新素材に含まれる粒子は、エネルギーを変換し、チオール-エン反応を起こす。その結果、成分内に新しい架橋結合が起こる。シカゴ大学のチームは、検証の過程で、柔らかいジェルを人骨と同等の強さへと変化させた。振動と動きが加わるほど堅くなり、圧力を受ければ受けるほど、強くなることを実証したのだ。

「骨と同じように、この素材は、力を加えた分だけ強くなるんです」とエッサー・カーン氏。

航空宇宙工学、ロケットにも


新素材には多くの可能性があるという。建物に用いれば、時間が経つほど強度を増すはずだ。その他の重要な用途としては、航空宇宙工学、たとえばロケットでもさまざまな素材を結合することが考えられる。

「この新素材の登場で、接着剤は大きな影響を受けるはずです」とエッサー・カーン氏は述べると、「接着剤は、素材の中でも常に問題が見つかるポイントです。より強い接着力と固定力に特化した接着剤も登場するかもしれません」と続けた。

(この記事は、英国のテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」から転載したものです)

翻訳=上林香織 編集=石井節子

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