同セミナーは2日間にわたり、多様性をテーマに三井物産のリアルな姿を届けるもの。初日の今回は「女性の働き方とリーダーシップ」について社員3名をスピーカーに、Forbes JAPAN Web編集長・谷本有香がモデレーターを務めた。
「商社マン」という言葉があるように、総合商社では男性社員が活躍するイメージが今も付き纏う。
しかし近年、特にこの10年における三井物産の変貌には目を見張る。性別や国籍に限らず、多様なバックグラウンドを持つ社員が活躍できる環境が同社にはあるのだ。
意欲ある誰しもが能力を発揮できる組織へと目まぐるしく変わりゆく三井物産。その姿を、お見せしよう。
【登壇者プロフィール】
恩田ちさと:サステナビリティ経営推進部長。1995年に入社以降、主にプロジェクト本部の中南米を担当。2020年より現職。
ラファエル ティンティン サンタマリア:人事総務部ダイバーシティ経営推進室所属。2001年エクアドル三井物産入社(当時)、2004年に米国三井物産ニューヨーク本店へ。以降、東京やシンガポールで人事業務に携わる。
一筆亜紀子:人事総務部人材開発室採用担当。2016年に入社後、約3年半、流通事業本部にて消費者ビジネスに徹した後、2019年秋より現職。今回の登壇者のなかでは最若手。
ダイバーシティ=事業の推進力
セッションのモデレーターを務めた谷本はまず「なぜ、いま三井物産はダイバーシティを必要としているのか」と問いかけた。
口を開いたのはラファエル氏。
「ご存知の通り、三井物産は事業を多角的に展開しています。弊社が昨今注力している消費者視点を起点にしたビジネス推進がその一例です。新たなニーズを捉え、国内外の様々なマーケットに入り込む上で多様な考え方や発想力、事業構築力が欠かせません。
BtoCそしてBtoBビジネスにおいても、幅広い価値観を持つ人々の気持ちに寄り添った事業を新たに作り出すには、多様性が必要なのです」
Diversity&Inclusionだけで終わらず、イノベーションにまでつなげていくことが三井物産にとってのキーワードだという。
「挑戦と創造」を掲げる同社には、世の中の役に立ちたいという思いを持つ人間が集まっている。自由闊達な風土のなか、様々な考え方を持つ社員に活躍してほしい。それを経営層が本気で考えているのが三井物産らしさだとラファエル氏は語った。
“たった”10年で巨大組織が劇的に変化、多様な人材が活躍する場所へ
そもそも日本の多くの企業では、男性を一つのロールモデルとして組織を形成し運営してきた過去がある。それはきっと、かつての商社においてかなり顕著だったはずだ。となると、様々なライフイベントに応じて働き方を変えなければならない女性は働きにくい、企業に貢献しづらいということはないのだろうか。
恩田氏は入社当時のことをこう振り返る。
「160名の同期の中で、女性は数名しかおらず、当時はその数少ない女性がそれぞれ、上司と働き方を都度相談していました。組織として、というよりは“個別案件”として現場が柔軟に対応していたのです」(恩田)
一方、一筆氏は「周りに活躍している若手、中堅女性社員は多く、ジェンダーギャップを感じたことはありません」と話す。
同社の2021年卒を対象にした新卒採用における女性割合は40%に増えた。2020年度キャリア採用においても、通期採用者数の30%以上を女性が占めている。さらに、10年前は1%未満だった女性の管理職比率も10%に迫りつつあり、この数字からも同社の変貌が読み解ける。
「各社員のニーズに合わせて働き方はフレキシブルに対応できていると思います。数年前から試験導入したテレワークもコロナ禍で促進され、チームに小さなお子さんがいる社員がいれば、みんなで助け合うスピリットも育っています」(恩田)
家庭環境に応じた異動も可能だ。例えば育休復帰後は出張がなく、仕事のコントロールが比較的可能な職務内容の仕事に携わり、ひと段落したら出張なども伴う職務に就く事例もある。チームや部署で相談して検討する。最近は男性が育休を取得するシーンも増えてきた。
働き方における近年の変化についてラファエル氏は「2013年にシンガポールへ赴任し、2018年に東京本社へ戻ってきた時、組織としての変貌に驚きました。浦島太郎状態でしたね」と笑う。
「制度が整っていたし、ワークライフマネジメントについて社員の意識も変わっていたのです。一方で、働きやすさだけを追求するのではなく、成果にもこだわり、成果を出した人に報いるという点を組織として重要視しています」(ラファエル)
女性だけではない。国籍とも無関係に成果を評価するという三井物産の姿勢は、海外で現地採用されたラファエル氏の活躍ぶりに見出すことができる。
同氏は組織の根幹ともいえる経営理念の刷新に関わり、本ウェビナー後にダイバーシティ経営推進室室長に就任。今後も同社における「多様なプロ人材」の活躍推進を組織として推し進めたい考えだ。
多様性の推進というと、ある種社員の甘やかしのような印象を持つこともあるかもしれない。しかし大事なのは、その人がいかに自身の実力を発揮して活躍できるか。
社員一人ひとりがワークライフマネジメントしながら、成果にも向き合う実力主義の組織として、三井物産は着実に歩みを進めている。
リーダーシップの“かたち”も、人それぞれ
谷本が次に投げかけたのは「ダイバーシティの推進を描くロードマップ上で、今足りてない部分、これから取り組みたいことは何か」という問いだった。
「これまでは管理職を中心にリーダーシップを求めていたが、今後は若手を含めできるだけ多くの社員にリーダーシップを発揮してもらいたいと考えています」(ラファエル)
リーダーシップは誰にでもあるわけでなく、しかもその在り方は人によって異なる。リーダーを支える人や体制にも一考が必要なのではないだろうか。
これについて恩田氏は「例えば私は部長という立場ではありますが、いわゆるバリキャリや強いリーダーとは程遠いと思います。意識しているのは、メンバーそれぞれに対してどういうリーダーシップが合っているかを見極めながらマネジメントすること。
人材育成は上司が部下を育成するものと思われがちですが、部下からも『この場面では、リーダーにはこのように振舞ってほしい』と伝えて、双方向で成長していきたいですね」
全員が同じリーダー像を追わなくても良い。それぞれの性格や特性に応じたリーダーとしての形を模索していこう。そんな三井物産の姿勢にも多様性が表れていた。
恩田氏の言葉を受けて、一筆氏は「目立って人を魅了しようとしても空回りするだけだと思っている。私自身のリーダーシップは、誰よりも事業を理解し『やり遂げる』という芯をもつことなのかなと考えています」と語った。
では「やり遂げたい」という社員の思いに対して、「やってみたら」と言える企業文化はあるのだろうか。
「社会のため、組織のためになることが説明できるのであれば、責任と共に挑戦のチャンスが与えられますね。逆を言えば、自分から動こうとする心構えと行動力がないと何も進められない。そういった厳しさのある会社でもあります」(ラファエル)
三井物産には社員各々のカタチでのリーダーシップが求められることが十二分に伝わってきた。
自分の経験と思いに自信を持って、飛び込んできてほしい
最後に、三井物産において、どのような人が活躍しやすいと考えているのかを3名に聞いた。
「今の時代は、同じことをくり返しても先行きは明るくありません。どうやったら前に進めるかを考え、具体的な歩みを新たな形で形成できる人が活躍できるのではないでしょうか。管理職前後の若手であれば、失敗を恐れずにどんどん進んでいくべきかと。
もう少し上のポジションだと、人の意見をちゃんと聞ける人。多様性が重要であることの裏返しで、多様な意見を受け入れ咀嚼した上で組織としての行動につなげないと、人材を活かしきれません。上の立場になればなるほど、受け入れる力が大事なのだと思います」(恩田)
「『多様性を力に』出来る人でしょうか。好奇心と探究心を持ち、プロフェッショナルとして物事を前に進められる人。自身のフィールドで着々と積み重ねてきたことが大事だと思います。我々の経営理念に共感した上で活躍してくれたら、本当に嬉しいですね」(ラファエル)
キャリアを積み上げて、その力で社会課題を真に解決したいという意志を持った方が、キャリア入社社員の共通点かなと。そのような方が実力を発揮できる環境を整えるのが人事の仕事です。その役目を今後も全力で果たしていくので、安心して選考を受けてもらいたいです」(一筆)
ダイバーシティへの考え方が時々刻々と更新されていく現代。重要なのは、自らの芯となる考えを持ち、実力主義の環境のなかでアウトプットにも真摯に向き合うことなのではないだろうか。
三井物産には多様な人材が挑戦し活躍できる場が用意されている。あなた自身が持つ価値観やアイデアを生かして、三井物産に変革と成長をもたらしてほしい。