新型コロナウイルスのワクチンに見る「日米の差」


では、アメリカではなぜ、ファイザー社とモデルナ社と(もうすぐジョンソン・エンド・ジョンソン社も)が早期にワクチン開発と緊急承認をとりつけて、大規模接種が可能になったのだろうか。

新型コロナワクチンの開発に当たっては、極めて緊急性が高いプロジェクトとして、政府や財団などからの積極的な支援もあり、治験と同時に大量生産を始めていた。もし承認が下りなければ廃棄になる覚悟だったといわれている。治験のプロセスも政府が積極的に支援していた。

ファイザー社とモデルナ社のワクチンはmRNAを使ったワクチンで、これまでのワクチンとは製造方法が根本的に異なるものだが、この技術開発はかなり前から行われていたもので、技術は開発済み、今回はそれを新型コロナに応用しただけ、ということらしい。基礎研究もきちんとしてきた成果が表れている。

最後に私事にはなるが、私はすでにニューヨーク居住の高齢者枠で、モデルナ社のワクチンの二回接種を終えた。予約を取ったのは、1月上旬だが、オンラインで予約を入れるのにひと苦労した。希望者が供給量を大幅に上回っていたからだ。さらに、最初に予約した日は、ワクチン不足で、一週間延期となった。結局私が接種を受けられたのは、モデルナ社のワクチンで、一回目が1月28日、二回目が4週間後の2月25日だった。幸いにも、大きな副反応もなく、これで無事、抗体を獲得できたと考えている。

ワクチン接種の予約申し込みはすべてオンライン(いまは、電話でも可能)、予約確認はEメール、接種24時間前以内の問診もオンラインで行われた。ワクチン接種会場で印象的だったのが、受付と、接種担当者全員がタブレットを持っていて、本人確認や問診票の提出確認、接種の登録もすべてタブレットで行っていることだった。二回目の接種が終わった瞬間に接種する人がタブレットを操作、私宛にEメールで終了しました、と連絡が入った。

ワクチン接種のオンライン・システム構築や接種会場の準備には相当のリソースを投入している、という印象を受けた。(3月8日記)


伊藤隆敏◎コロンビア大学教授・政策研究大学院大学特別教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D取得)。1991年一橋大学教授、2002〜14年東京大学教授。近著 に『Managing Currency Risk』(共著、2019年度・第62回日経・経済図書文化賞受賞)、『The Japanese Economy』(2nd Edition、共著)。

文=伊藤隆敏

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