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日本でもようやく医療関係者への新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。高齢者への接種も4月下旬開始の予定で、年末までには国民全員分を確保する予定だ。日本では、日本の研究機関や民間企業によるワクチン開発は遅々として進まず、ライセンス製造も(計画はあるものの)当分できそうもない。

接種計画は海外企業の日本向けの分の製造・出荷が順調に行われることに頼っている。欧州連合(EU)がワクチンの輸出許可制を導入していて、日本向けワクチンの輸出承認も取らなくてはならない。イタリアが3月5日、英アストラゼネカ社のワクチンのオーストラリア向け輸出を差し止めたように、生産国での消費を優先として、輸出差し止めとなるリスクはある。日本のワクチン接種の進捗は他力本願だ。

アメリカでは、現在、一日200万人以上のペースでワクチン接種が進んでいる。現在までの接種に使用されているのは、二回の接種が必要なファイザー社製、モデルナ社製だが、一回の接種で済むジョンソン・エンド・ジョンソン社製も承認された。接種ペースはさらに加速するだろう。バイデン大統領は、5月末までに成人全員の接種を完了する、としている。

なぜ、日本は、ワクチン開発・製造・輸入で出遅れたのだろうか。昨年来、塩野義製薬と大阪大学発のアンジェス社が治験の段階にはいっていると報道されているが、承認申請はいつになるのだろう。そもそも、日本では、子宮頸がんワクチンが、(因果関係が立証できなくても)副作用がでたと報道されると、接種が推奨されなくなった事例がある。

薬害エイズ問題では厚生省(現・厚生労働省)の官僚が刑事責任を問われたこともあり、厚生労働省が新薬や新ワクチンの承認には極めて慎重だ、という見方もある。

さらに、日本では一般的に、治験に参加する人を集めるのも難しい、といわれており、一般的に薬品の承認までかかる時間が長い。したがって、成功の確率が低い(が当たればリターンも大きい)新薬開発には、大企業は投資をしたがらないし、バイオ・ベンチャーも投資家の資金が集まらない。

文=伊藤隆敏

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