ミュンヘンを拠点とするリリウムは、今回の合併により8億3000万ドルを調達する予定で、そのうち3億8000万ドルはエングルのSPACから、4億5000万ドルは他社からの出資で調達する。リリウムは、eVTOLと呼ばれる電動の垂直離着陸機を用いて都市部の交通渋滞に打ち勝つことを目指している。
リリウムによると、この資金は7人乗りの新型電気航空機の開発とテストに使用され、2024年に商業運航を開始する予定という。フォーブスは今年2月、リリウムが5人乗りバージョンの計画を破棄し、よりサイズが大きい新型のエアタクシーの試験飛行が、2022年以降に実施されると報じていた。
リリウムの共同創業者でCEOのダニエル・ウィーガンドは、声明で「現在の交通や輸送のインフラは壊れており、人々の時間を奪い、環境汚染などの問題を引き起こしている。私たちが独自の電動ジェット技術を開発するのは、低騒音で環境に優しいモビリティを低コストで実現するためだ」と述べた。
リリウムのSPACとの合併は、バッテリー駆動のエアタクシーの実用化を目指すスタートアップの競争が過熱していることを示す、最新のシグナルと言える。
トヨタが出資する「ジョビー・アビエーション(Joby Aviation)」も今年2月、リンクトインの共同創設者のリード・ホフマンと、ソーシャルゲーム企業ジンガ創設者のマーク・ピンカスが設立したSPAC(特別買収目的会社)のReinvent Technology Partnersとの合併により、上場すると発表した。
さらに、リリウムのドイツの競合であるVolocopterも先日、ブラックロックを含む投資家から2億3900万ドルを調達していた。
リリウムは、昨年6月に著名なハイテク投資家であるBaillie Giffordから3500万ドルを調達したが、その際に評価額が10億ドルを突破し、欧州のユニコーンの仲間入りを果たしていた。
リリウムは今年1月、ロンドンのヒースロー空港を所有するスペインのインフラ企業Ferrovialと共同で、フロリダ州に垂直離着陸機専用の「バーティポート」のネットワークを建設すると発表したが、欧州でも同様のプロジェクトを立ち上げ予定という。
リリウムの合併相手であるSPACのQellは、GMの海外事業の元トップのエングルが、「次世代モビリティ」への投資にフォーカスし、2020年8月に立ち上げた企業だ。