eコマースとテクノロジーの巨人であるAmazonは、生産性目標の達成を追求する一方で、倉庫で働く従業員たちに楽しみながら業務をこなしてもらうため、ゲーミフィケーションシステムを導入している。一般的な作業でパフォーマンスのレベルが上がると報酬が得られる仕組みだ。
最初に「インフォメーション(The Information)」が独自にリポートし、他社も追随した報道によれば、Amazonは、倉庫で働く従業員が使うワークステーションの近くに小さなビデオスクリーンを設置している。画面に表示されているのは、レースや城づくりといった対戦型ゲームだ。
キャッスル・クラフター、ドラゴンデュエル、ミッションレーサー、ピックス・イン・スペースといったタイトルのゲームを進められるかどうかは、従業員が業務中にどれだけ作業を完了できるか次第だ。ゲームは1人でもプレイできるし、小規模または大規模なチームの一員としてもプレイできる。
ゲームに参加する従業員は、シフト中に仕事とゲームを進めるなかで、ポイントや仮想バッジといったインセンティブを獲得していく。
ゲーミフィケーションを活用して従業員の生産性を高めることは、リテールワイヤーが選んだ業界の専門家グループ「ブレイントラスト」のあいだでも賛否両論だ。先日行われたオンラインディスカッションでは、こうした動きは従業員にとって不利なものだ、という意見もあった。
「表面的にはすばらしいアイディアで、従業員のためになりそうに思えるが、実際はそうではない」と指摘するのは、コンサルタントのケン・ロニヤイ(Ken Lonyai)だ。「Amazonで労働組合が結成されたのは、会社側からのアウトプットへの期待と要求があまりに高く、従業員たちが、自分の身を守り、まっとうな労働条件や報酬と会社のニーズのバランスをとるためには組合が必要だと考えたからだ。ゲーミフィケーションの本当の目的は、従業員が何を達成しているか、そして、より重要なことだが、何を達成していないかを、さらに細かく監視することだ。組合の結成を促したような過酷な労働条件を変えるものではないし、むしろ多くの従業員にとって、さらに条件は悪化するだろう」