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2021.03.31 07:00

「強い」だけでなく「優しい」。最強のサステナビリティ賢者5社


シマノ|長期視点の経営力が生んだ「日産超え」


変速機やブレーキなどの自転車部品や釣具を手がけるシマノ。コロナ禍に伴う「密を避けたい」という人々の意識が自転車での移動やアウトドアの需要を喚起し、2020年11月には株価が上場来高値の2万4760円を記録。時価総額は日産自動車を上回り、部品メーカーが完成車メーカーを超える大躍進をみせた。

非財務データからみたシマノの特徴は「長期視点である」ことだ。例えば、取締役会のスコアは業界1位。これは、取締役会の構成員比率(社外取締役比率等)、開催頻度などから評価する項目だが、シマノは特に取締役の平均在任期間や最長在任期間が同業他社の2倍弱と長く、安定した経営体制となっている。

シマノは同族・世襲経営を行っている企業だ。1921年の創業以来、モータリゼーションの波にも負けず、自転車部門専業化、釣具事業部発足、グローバル展開などの経営革新を進めることができたのは、目先の利益追求ではなく、長期視点で事業を醸成させられるファミリービジネスならではの強さが奏功している。特筆すべきは海外展開で、英語の社内公用語化は、楽天やユニクロの事例が話題になる以前の98年に着手。19年12月期の海外売り上げ比率は約9割に達する。


世界中の自転車に部品が組み込まれていることから「自転車界のインテル」とも呼ばれるシマノ。世界最大の自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」でも支持は厚く、参加選手の多くが同社部品を使用している。


「取締役会」「人的資本」「リスク管理」のスコアは、直近3年間でいずれも上昇している。「取締役会」は企業の将来構想や意思決定の能力、「人的資本」スコアは従業員の離職率や研修費用など、従業員への優しさを示している。


富士通の下水道氾濫検知ソリューション|気候変動適応ビジネスの先駆者


近年、増加傾向にあるゲリラ豪雨。浸水災害など、ゲリラ豪雨の被害を減少させるため、下水道の水位変化をリアルタイムで知りたいというニーズが各自治体で日増しに高まっている。この課題にIoT技術で応えたのは富士通だ。開発したのは、比較的簡易な装置のみでクラウド上で水位情報を収集でき、温度差で得られるエネルギーを電力に変換する仕組みを搭載するなど、コスト的にも環境にも優しい下水道氾濫検知ソリューション。既存の検知手法と比べて導入費や維持費を大きく低減できるため、今後スピーディーに広域で導入されることが期待される。

富士通の非財務データからは、環境問題へ真摯に向き合っていることが読み取れる。環境管理、水、エネルギー、廃棄物など、環境貢献度を示す多くの項目のスコアが、業界内で高水準を維持し向上している。下水道の氾濫検知はニッチな領域に思えるが、ゲリラ豪雨は気候変動によりもたらされている事象のひとつとされる。世界はいま気候変動対策に向かっており、その適応ビジネスの潜在的市場規模は2050年時点で年間最大50兆円と見込まれている。その領域にいち早く取り組み、実績を積んだ経験・ノウハウは、今後の事業展開でのアドバンテージとなる。


気象庁によると、全国の1時間降水量50mm以上の年間発生回数は1976から2019年まで10年あたり28.9回増加している。とくにゲリラ豪雨は突発的で予測が困難なため、浸水災害などの被害低減に向けた需要が高まっている。


図は、システム開発業界における富士通の位置を表したもの。右にいくほどスコアが高く、業界内で上位に位置していることを表している。いずれも上位で、システム開発企業としてはトップクラスに環境貢献度が高い。
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文=フォーブス・ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.078 2021年2月号(2020/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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