ビジネス

2021.03.31

「強い」だけでなく「優しい」。最強のサステナビリティ賢者5社


丸井グループ|舞台裏も全公開のサステナビリティ総合商社


「アフターデジタル」への時代の変化をいち早く感知し、定期借家契約(定借)によるショッピングセンター(SC)化、フィンテック事業、D2C事業とビジネスモデルの革新を続けてきた丸井グループ。コロナ禍で店舗売り上げを主力とする百貨店は軒並み業績を大幅に悪化させているが、丸井グループの営業利益の減少幅は競合と比べ軽微で、時価総額では業界トップを堅持。「売らない店」を合言葉に、モノを売るのではなく、体験を提供する百貨店へと大転換してきたことが功を奏した。

リーマンショック後の2度の⾚字決算をともなう経営危機を乗り越え、19年3月期まで連結営業利益を10期連続で伸ばしてきた丸井の強みは、すべてのステークホルダーが「しあわせ」を感じられる「インクルージョン(包摂)」を目指した共創経営。非財務データの観点でみると、「しあわせ」追求へのコミットとして、着実に非財務情報の開示を進めてきた姿が浮かび上がる。

温室効果ガス排出量、女性の管理職比率、離職率、役員の報酬額など、見せたいものも見せたくないものも全部公開。上辺だけで取りつくろわず、舞台裏も見せる姿勢はすなわち、長期価値の創造に本気で取り組み、そこから逃げないという、企業としての覚悟である。この姿勢により、顧客、従業員、取引先、株主・投資家、地域社会からの信頼を勝ち取っている。


「インクルージョン(包摂)」を経営テーマに掲げる丸井グループ。最近では、ファッションに興味のある人たちばかりでなく、経営理念に共感したことがきっかけで採用活動にエントリーする学生が増えている。


図は、過去10年間の丸井グループの非財務情報の開示率を示している。10年前の7.7%は、他社と変わりない開示率だったが、その後、着実に情報開示を進め、直近の21.50%は、百貨店業界でトップの開示率となっている。

グローバルキャスト|営業代行業の「SX」先進モデル


名古屋を本拠に営業代行業を展開するグローバルキャスト。業態上、表舞台に出ることは少ないが、大手キャッシュレス決済サービス導入では全国数百社におよぶ代理店の中でトップシェア、大手電力会社系の光インターネット導入でも近畿圏の約100社におよぶ代理店の中でトップシェアを取るなど、誰もが知る大手企業の販売促進を影から支えてきた。

インサイドセールスにロボットを導入するなど、デジタル変革(DX)による業務改革が功を奏し、外出自粛に伴う高速ブロードバンド回線の切り替え需要が大幅に増えた際にも、社員の負担を増やすことなく業績を伸ばすことができた。2021年1月期の売り上げは昨対比189.1%の80億円を見込む。

泥臭いイメージのある営業代行業をけん引する同社だが、住宅用蓄電池などの再エネ設備関連事業では、地域コミュニティ内での再エネ自給自足の実現を目指す取り組みを行うなど、サステナビリティをしっかりと見据えている。非上場でありながら、非財務情報の充実に取り組んでいる点も評価できる。持続的に企業価値を創造していくために、DXに加えてSX(サステナブル・トランスフォーメーション)と正対する姿勢は、中小企業の優れたモデルケースといえるだろう。


持続可能な社会の実現に不可欠な再生可能エネルギー。経済産業省によると2019年度の国内発電量に占める再エネ比率は18.0%で欧州主要国の4割程度と比べ低水準。企業はもちろん、住宅での再エネ活用も重要視されている。


売上高/従業員あたりの温室効果ガスおよび二酸化炭素排出量等の削減状況を示す「気候変動スコア」は、関連5業種(法人サービス、セールス、BPO、メディア、商社)の中で上位15%の成績。業界最大手よりも上位に位置する。
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文=フォーブス・ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.078 2021年2月号(2020/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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