ビジネス

2021.03.31

ビリオネア李嘉誠のVCも支援 植物由来の脂質開発に挑む企業

(C)Nourish Ingredients

肉や乳製品の代替商品に数十億ドル(数千億円)もの資金がつぎ込まれている。肉・乳製品に代わる商品は植物由来食品の「ゴールドラッシュ」の一部であり、この新たな産業は今後10年で1000億ドル(約11兆円)に到達すると予想されている。資金や時間の圧倒的大部分が費やされているのは、バーガーや牛乳代替製品の製造とマーケティングだ。

しかし、ベンチャーキャピタルが支援するこうしたブランドの大半は、いまだに実際の肉や乳製品と競争する上で味や食感の問題を抱えている。

香港のベンチャー投資企業ホライゾンズ・ベンチャーズ(維港投資)の投資家クリス・リューは、こうした代替たんぱく質のつなぎとする脂質を探していた。彼は、この解決策を秘めたスタートアップが見つかったと考えている。ノーリッシュ・イングリーディエンツ(Nourish Ingredients)だ。

オーストラリアを拠点とする科学者ジェームズ・ピートリー博士とベン・レイタ博士が2年前に設立した同社は、独自の発酵プロセスを活用し、植物由来であるビーガン(動物由来の原料を使わないこと)の脂質を開発している。同社では、パーム油やココナツオイルなど一般的な代替品は使っていない。

同社は先日、香港の大富豪である李嘉誠が率いるホライゾンズと、オーストラリア政府のベンチャーキャピタルファンドであるメイン・シーケンス・ベンチャーズ(Main Sequence Ventures)が率いる1100万ドル(約12億円)のシードラウンドを発表した。同社は今は試作品段階にあり、調達された資金を使って試験中の脂質をいくつか商品化する。

ホライゾンズは、今では代替たんぱく質業界を率いるようになった企業の多くに極めて重要な資金提供を行なってきた。インポッシブル・フーズ、イート・ジャスト(Eat Just)や同社の培養肉企業グッド・ミート(Good Meat)、フォーブスの「30アンダー30」を受賞したパーフェクト・デー(Perfect Day)などがその例だ。しかしリューは、こうした企業が自社の製法に合った脂質を見つけるのに苦労している様子を散々見てきたと明かした。

リューは「化学的観点から見ると、脂質は非常に難しい問題だ。細胞組織の操作だけではなく非常に多くの複雑な要素があり、とても独特だ」と述べた。
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翻訳・編集=出田静

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