オンライン授業で味わった孤立感 大学教育の未来は?|#U30と考える

連載「U30と考えるソーシャルグッド」 ゲストは、熊本大学の鈴木克明教授

新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が発令された昨年4月。国内の大学は対面授業を取りやめ、これまでの大学生活が一変し、オンラインの学習スタイルに移行した。1年続いたオンライン授業は、私たちに大学で学ぶ意味を問い直している。

U30世代の若者が社会に対して感じるモヤモヤを、第一線で活躍する大人や専門家にぶつけて、より良いヒントを探る連載「U30と考えるソーシャルグッド」。今回は、教育工学に詳しい熊本大学教授システム学研究センター長の鈴木克明教授に、NO YOUTH NO JAPANの大学生メンバーが、大学のオンライン授業で感じた疑問や日本の大学教育の未来像について聞く。

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オンライン授業に突如切り替わった当事者である私たちにとって、感染症対策とはいえ、不安と孤独を感じる日々だった。今後、大学教育はどう変化していくのだろうか──。

対面授業再開が遅れた理由


NO YOUTH NO JAPAN三村紗葵(以下、NYNJ三村):この1年間は、大学側からのきちんとした説明も得られないままオンライン授業が続きました。今もオンライン授業を続ける学生の一人として、この状態がいつまで続くのか、本当に対面授業が再開されるのか、とても不安です。そもそもなぜ対面授業の再開がなかなか進まないのでしょうか?

鈴木克明(以下、鈴木):まず、安心・安全が確保できないということがあると思います。これは、大学生の年代は新型コロナに感染しても無症状者が多く、活動範囲が小中学生と比べて広範囲にわたるため、感染拡大を防ぐのが難しいということ。影響がどれほど広がるか分かりません。

もう一点は、十分なインターネット環境が大学内に確保できていないという問題です。もちろん進んでいる大学はありますが、対面で授業をやっているからオンラインの環境はキャンパス内には必要ないという感覚の大学もあります。感染拡大当初から状況が流動的に変わったため、大学側からの説明も、きちんとできなかったのではないかと思います。

NYNJ三村:文部科学省(以下、文科省)としては、対面授業の再開を求めています。文科省の方針に対して、大学はどこまで応えていくのでしょうか。対面授業の再開の判断は、最終的には各大学に任せられるのでしょうか。

鈴木:文科省が7割という数字を出して対面授業の再開を求めていますが、再開してクラスターが起きたら、それは大学の責任になるわけです。だから慎重にならざるを得ない部分があるのだと思います。一方で、「文科省が言っているのだから再開を検討しなければいけないよね」と考えている大学も、少なくはないと思います。実際に、首都圏を含む主要大学30校の6割が4月以降は、対面授業を中心にするという調査も出ています。

精神面のケアは? 学生同士のコミュニケーションも変化


NYNJ三村:オンライン授業が続くことで、友人ができずに孤立感を抱いたり、中退や休学をする学生も出ています。想像していた大学生活とは程遠い生活を送っている学生に対して、大学側はどのようなケアをすると良いのでしょうか。

鈴木:このコロナ禍でやはり一番大変だったのは新入生だったと思います。繋がりをつくるチャンスが全くありませんでしたよね。欧米の大学では、いわゆるアカデミックアドバイザーのような制度が当たり前にありますが、日本ではワンストップサービスのように「困ったらこの人に聞く」みたいな仕組みが、きちんと確立されているとは限りません。
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文=三村紗葵(NO YOUTH NO JAPAN)

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