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2021.03.30

ナイキ、21歳ラッパーの「悪魔のシューズ」を商標権侵害で提訴

リル・ナズ・X(David Crotty/Patrick McMullan via Getty Images)

ナイキは3月29日、ラッパーのリル・ナズ・Xのスニーカー「サタン・シューズ」の製作者を商標権侵害で提訴した。このシューズのソールには人間の血の一滴が含まれているとされ、魔除けの印であるペンタグラムのペンダントがついている。

Z世代のラッパーとして注目の21歳のリル・ナズ・Xは、このシューズを新曲「Montero (Call Me By Your Name)」のミュージックビデオの公開と同時に発表し、保守派からの強い反発を浴びている。

今回の訴訟は、シューズを製作したニューヨークのアート集団「MSCHF」に対して起こされた。MSCHFは、ナイキの「エアマックス97」に改変を加えたデザインのシューズに血の一滴を封入し、ペンタグラムのペンダントをつけ、ミッドソール部分にはルカによる福音書の10章18節(サタンが天から落ちる場面に言及した一節)を意味する「Luke 10:18」の文字を刻んでいる。

ナイキは、このシューズについて、「当社の承認や認可を得ずに生産されたもので、当社はこのプロジェクトとは一切関係がない」と述べている。

ナイキは裁判所に対し、MSCHFにシューズの宣伝と製造を中止させ、ナイキの商標を侵害しているとされる「すべてのシューズ」や素材を「破壊のためにナイキに引き渡す」ことを求めている。同社は損害賠償を求めているが、金額は明記されておらず、裁判で証明された損失額の賠償を求めるとしている。



この訴訟を受けてリル・ナズ・Xは、人気アニメ「スポンジ・ボブ」のキャラクターであるイカルド・テンタクルズが、小銭を要求する動画をツイッターに投稿した。

MSCHFはこのシューズを1018ドルで3月29日に発売し、666足が即座に完売したという。

リル・ナズ・Xは、自身が同性愛者であることを公言しており、新曲の「Montero (Call Me By Your Name)」も同性愛をテーマとした楽曲だ。この曲のミュージックビデオのリリース時にツイッターに投稿したメッセージで彼は、「多くの仲間たちが秘密を抱えたまま死ぬと約束したのを知っている。この曲は他の多くの同性愛者たちが存在するための扉を開くことになる」と述べていた。

このミュージックビデオは、悪魔と同性愛者たちをとりあげたことで、保守派からの強い反発を招いている。

編集=上田裕資

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