米ウォール街の賞与、コロナ流行下で10%増 復興格差浮き彫りに

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新型コロナウイルス感染症の流行については、収束後の復興がどのようなものになるのかについての議論が盛んになされてきた。経済学者らは当初、V字型の回復を予想。少し時間がたてば全てが元通りになり、皆がコロナ前の状態に戻ると考えていた。

しかし、現実には全くそうはならず、米国ではK字型の回復が進行した。Kの字の上向きの線は、コロナ流行によって大きな利益を得た少数の人々、下向きの線は、逆に経済状況が急速に悪化したその他の人々を示している。

大手ネット企業のアマゾン・ドット・コムやフェイスブック、マイクロソフト、グーグル、アップルの株価は急騰し、それぞれの最高経営責任者(CEO)が持つ膨大な資産はさらに増加した。

コロナ禍で大きな利益を得たもう一つの業界は、ウォール街(米金融界)だ。2020年中盤以降から2021年には、ある興味深い現象が発生した。自宅に缶詰め状態になった人々が退屈のあまり、デイトレードを始めたのだ。株取引ブームが起きたことで、株式市場では史上最高値が相次いだ。

ニューヨーク州のトーマス・ディナポリ会計監査官によると、米金融界の利益は2020年、「トレーディングや引き受け業務の増加、および金利の低下」により急増。結果、2020年にニューヨーク市の証券業界で働く従業員に支払われた賞与の平均は10%上昇し、18万4000ドル(約2000万円)となった。

ただこの数字は同市で働く人だけのもので、市外で働く金融・証券業界関係者は含まれない。また、平均値だけでは収入の実態を把握しきれないことも考慮すべきだ。例えば、ビル・ゲイツとマーク・ザッカーバーグ、イーロン・マスク、ジェフ・ベゾスとニューヨーク市の消防士1人の保有資産額の平均を出すと、この消防士は億万長者になってしまう。

ディナポリは報道発表で「景気後退が起きた後で賞与プールが成長するのは珍しいことだ」と説明。賞与は同時多発テロが起きた2001年には33%減、金融危機が起きた2008年には47%減となったと指摘した。

米金融業界はニューヨークの健全な財政にとって欠かせないものだ。同市の民間セクターの雇用で証券業界が占める割合は全体の5%ほどだが、民間セクターの全給与に占める割合は約20%となっている。

編集=遠藤宗生

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