その方針は、「すべての授業はオンラインも併用のため通学してもしなくてもOK」、「担任教師は生徒側の選択制」、「時間割は教師と生徒が相談しながら一緒に決める(義務教育としてはきわめて異例)」、「職員室は生徒に開放する、生徒は食事をしてもただくつろいでもよい」、「開校時の先生は異動でなく手上げ方式」といった、実に革新的なものだ。
そして、同校が開校に先立って27日に行った開校除幕式・内覧会で、京都大学総合博物館准教授、塩瀬隆之氏が行ったスピーチが話題を呼んでいる。
写真提供:塩瀬隆之氏
塩瀬氏は「機械学習による熟練技能継承支援システムの研究」が専門で、「ATR 知能ロボティクス研究所」研究員も務めた工学博士である一方、NHK Eテレ「カガクノミカタ」番組制作委員、日本科学未来館「“おや?”っこひろば」総合監修者、文部科学省中央教育審議会委員(数理探究)を務めるなど、教育の分野にも貢献は多い。
ここでは同校ならびに塩瀬氏の許諾を得、塩瀬氏の挨拶全文を掲載する。
理想は『バーバパパのがっこう』にあり?
みなさまおはようございます。京都大学の塩瀬と申します。
このたびは、草潤中学校の開校、まことにおめでとうございます。
早川教育長よりこのような機会をいただき、まことにありがとうございます。私が最初に早川教育長から、「塩瀬さん、理想の学校ってどんな学校だと思うか?」と聞かれたとき、即答したのが、「『バーバパパのがっこう』のような学校」でした。この絵本の話を少し紹介させてください。
『バーバパパのがっこう』(A・チゾン/T・テイラー著、山下明生訳、辻村益朗装丁、講談社、1976年刊)
これはフランスの小学校のお話なんですけれども、学級崩壊が起きそうなときに、親御さんや市長さんが、「おまわりさんをつけてでもいいので、学校にしばりつけて勉強をさせないといけない」と言いだすところからスタートします。それを見かねたバーバパパが、皆を森の学校へ連れ出します。
バーバパパには個性豊かな家族がいるので、子どもたちの好きなことに合わせて、いろんなことを教えることができます。歌を歌うのが好きな子ども、自然観察が好きな子ども、機械いじりが好きな子ども、みんなそれぞれ夢中になるものが違います。