ビジネス

2021.04.01

内発的発展で尖った企業を輩出 コロナ危機こそ大阪「八尾モデル」から学べ

行政側のキーパーソンである八尾市の松尾泰貴(現友安製作所)。オープンファクトリーのオンライン配信からイベント登壇まで幅広くこなしていた。


「『みせるばやお』は、各社の情報をオープンにして共有することで、企業間の信頼関係を醸成する場になってきました。製造業が直面する難局を地域で乗り越えるためにも、今後は究極的なシェアリングの場となることを目指しています」

その企業間の「信頼関係」を感じる一幕があった。業務用家具メーカー、オーツーの工場見学に訪れたときのことだ。初めて一般の見学客を受け入れるにあたり、昔ながらの鉄工所の作業を安全に見学できるように、工場内は透明なフィルムで仕切られていた。

「この透明フィルムは、友安さんのところで買わせていただきました」と代表の梶原弘隆が言う。梶原は「みせるばやお」での交流をきっかけに、インテリア・DIY商品を販売する友安製作所の社長・友安啓則と意気投合し、商品開発などで連携するようになったのだという。

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工場を案内するオーツー代表の梶原弘隆。

オーツーの自社ブランド「QUON」

オーツーの自社ブランド「QUON」。社内にイスの脚を製造する鉄工所をもち、加工から縫製・裁断・組み立てまで一貫して行う。

八尾では、企業間のフラットな関係性にも驚かされる。例えば、ガラスや鏡の販売施工を手がけるコダマガラス。自社のYouTubeチャンネルで社長の児玉雄司が解説するのは、近所にある木村石鹸の「鏡の鱗状痕クリーナー」についてだ。一方、藤田金属では、リニューアルした社屋に他社商材を積極的に取り入れている。社長の藤田盛一郎は「ゆくゆくは八尾のショールームにしたい」と夢を語る。ボローニャのサロン文化に通じる八尾の「平場の文化」が、人と情報を横につないでいく。

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コダマガラスの工場では熟練の職人技が見られた。

地域に眠る資源や社内の経営資源を、地域内でシェアすることで横連携が生まれ、異業種が手を組みやすくなる。行政サポート型の「八尾モデル」は、他地域も取り入れやすい内発的発展の好例だろう。

文=督 あかり 写真=苅部太郎

この記事は 「Forbes JAPAN No.081 2021年5月号(2021/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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