ところが、アプリストアのモデルはしばらく前から危機に瀕している。筆者が2019年7月の記事で紹介したように、人気ゲーム「フォートナイト」の開発元エピック・ゲームズは2018年8月、アプリストア「Google Play」から撤退して、Android向けはゲーム公式サイトからインストーラーをダウンロードできるかたちへと変更すると発表した。
ネットフリックスやスポティファイ、ティンダーといった定額料金制サービスを提供する各社も、エピック・ゲームズの動きに続いた。iTunes、App Store、Google Playなど、それぞれが利用していたプラットフォームへの手数料支払いを回避しようとしたのだ。彼らは、アプリストアへの抗議運動を開始した。具体的には、当局への不服申し立てや、ツイートによる呼びかけ、アプリの削除、パロディ動画の作成、あるいは、一部のマーケットを去るという脅迫すらもあった(2021年2月、ノースダコタ州でアップストア規制法案が審議されたが、アップルがユーザーへの悪影響などを理由に反対し、否決されている)。
当然のことだが、プラットフォーム誕生直後の、大きなプレッシャーがかかっていたころに行われていたプラットフォーム管理と、現在のプラットフォーム管理は同じものではない。いまのプラットフォームは、成長著しい分野への唯一かつ一元的なアクセスルートとなっている。しかも、このプラットフォームを制御する2つの企業は、アクセスによって生じる売上の3分の1に及ぶ「税(手数料)」を課す状態を変えようとしていない。
こうした「30%マフィア」の連盟については、かなり前から、目に余る悪習だと訴える企業が増えている。プラットフォームを管理する大手ハイテク企業がそうした行為を独断的に行う一方で、恣意的に例外を認めたり、プラットフォーム内で自社製アプリと競合させる権利を維持したりしているのであれば、なおのことそうだろう。
アプリストアが価値を生み出したことについては、疑う余地はない。多数の開発者にとって、アプリストアが事実上、インターネットにアクセスできる唯一の手段なのだとしたら、彼らは、手数料システムを維持するかどうかについて、見直しはできないだろう。
アプリストア・モデルを批判する側は、反トラスト法を持ち出して脅す姿勢を見せており、彼らが不正だとみなすシステムから彼らを守ってくれる新たな規制が導入されるのを待っている。その一方で、プラットフォームを運営する側は、抗議運動をどうにかして封じ、アプリストアというビジネスモデル全体が一掃される危機を回避するすべはないものかと思案している。
アプリストア業界には今後も注目だ。