ニューヨークに拠点を置くコモディティ調査会社CPMの新たな調査によると、今後の値動きは、パンデミックが猛威を振るい始めた頃に見られた歴史的高騰には及ばないものになりそうだ。
「2021年の価格上昇は、昨年に比べると控えめなものになると予想される」と、CPMのリポートは述べている。
ロンドン地金市場協会(LBMA)の2020年データによると、金地金(bullion)の価格は、2月のトロイオンスあたり1472ドルから、8月の2067ドルまで、40%も高騰した。金地金を取り扱うSPDRゴールド・シェアの上場投資信託も、同様の値動きを見せた。
この記事を執筆した2021年3月23日の時点で、金地金価格は1736ドル前後となっている。
「投資家の金需要」がカギであり続ける
調査リポートでは、その見解をサポートする要因として、2つの大きなポイントを挙げている。
投資家の需要は、引き続き高い水準を保ちそうだ。CPMの推定によると、グローバルな投資需要は2020年には4450万オンスだったが、2021年は4280万オンスに減少する見通しだ。
投資需要は、価格上昇のカギを握る。一方、金の宝飾品需要は、価格に反比例する傾向にある。したがって、予想される高水準の投資需要は、価格を下支えするだろう。
しかし、2021年の金投資家の行動は、昨年とは異なるものになる可能性が高い。2020年の投資家たちは、価格上昇を追うように金を購入したが、2021年には、価格が下がったタイミングで金地金を購入する傾向になるとリポートは述べている。
「投資家たちは昨年、金価格の上昇に追従するようにして、大量のゴールドを蓄えた。今年も金の購入が予想されるものの、一時的に価格が下がるのを待ってから大量購入に踏み切る形になるだろう」
その結果、金価格が急上昇する可能性は低くなる。
投資家による金の買い付けが予測を下回った場合、少なくとも一時的に金価格が急落する可能性もある、とリポートは指摘している。実際の記述は以下の通りだ。
「2021年のあいだに投資家の金需要の伸びが鈍化した場合、少なくとも一時的に価格が軟化する可能性がある。この場合も、2020年以前に見られた価格よりは高値で推移すると予測される」
中央銀行は引き続き、金市場で活発に動く見込み
一方、中央銀行は、2021年にさらに700万オンス程度、すなわち昨年と同程度を追加で獲得する見込みだ。中央銀行は、その準備金に貴金属を加える場合、日和見的に、つまり価格に対して敏感に取引する傾向がある。
中央銀行からの需要の少なくとも一部は、保有している米ドルの一部を処分したいという願望に起因している。
「多くの中央銀行、とりわけ発展途上国の中央銀行は、依然として米ドルやユーロから資産を分散させることを望んでおり、当面は(金の)保有量を増やし続ける可能性が高い」と、リポートは述べている。