ログインを変えるスタートアップID.meの企業価値が15億ドルに

ID.me CEOのBlake Hall /(C)ID.me


コロナ禍でオンラインIDの需要は拡大


ID.meの評価額が10億ドルを突破するまでには長い時間を要した。Hallは、米陸軍レンジャー部隊の同僚だったMatthew Thompsonと2010年にID.meの前身であるTroopSwapを設立した。もともとは、兵役経験者向けのECサイトで、同社が兵役経験者であることを認証したユーザーに対し、提携マーチャントが割引販売を行うというアフィリエイト・マーケティングを展開していた。

その後、TroopSwapは社名をID.meに変え、共同創業者として後にCTOとなるTanel Suurhansが参画した。ID.meは、兵役経験者以外にも、医療従事者、教職員や学生などに割引販売を提供すると同時に、彼らが政府機関のポータルサイトにアクセスする際のID認証サービスを提供した。

多くのスタートアップや大手企業がID確認や信用調査などのサービスを手掛けているが、ID.meは動画チャットを含むエンド・ツー・エンドの確認フローを採用している点が他社と異なる。

「車のパーツに例えると、信用調査はタイヤで、Prove(電話ベースのID確認サービス)はトランスミッション、AuthenticID(不正防止システム)はエンジンだ。我々は、これらを事前に組み立て、モペットやトヨタのカムリ、フォードのF-150、Brinks社製の現金輸送トラックといった具合に、用途に応じて異なるサービスを提供する」とHallは話す。

現在、同社のユーザー数は3900万人で、ARR(年間経常収益)は6500万ドルを超えるという。また、Hallによると、財務省などとの契約は、5年間で4億ドル近くに達する見込みだ。

「新型コロナウイルスの感染拡大によって、オンラインでIDを確認するサービスに対する需要が高まった」と元米商務長官で、プリツカー家出身のビリオネアであるペニー・プリツカーは述べた。プリツカーは、自身の会社であるPSP Growthを通じてID.meに出資している。

「21世紀においては、信頼こそが偉大な事業の基盤だ。ID.meは、信頼に関する事業を展開している」とプリツカーは話す。Hallによると、オンラインポータルを利用して失業保険を受給する人が増える中、ID.meはこれまでに120万件の不正を阻止したという。

米国外からのハッキングの脅威について質問すると、「今回調達した資金を使って、支援を必要とする人を助け、危害を与えようとする者から我々の国を守っていきたい」と、元軍人らしい答えが返ってきた。

編集=上田裕資

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