グーグルやフェイスブックのワンクリック・ログインが多くの人に利用されている一方で、ID.meは米政府機関との契約を通じて、驚くべき規模のネットワークを構築している。2020年8月以降に、22の州が同社と契約し、最近では、IRS(内国歳入庁)と財務省が新たに契約した。ジョージア州を含む19の州では、市民が失業手当の受給手続きを行う際にID.meにログインしているが、近い将来、30州に増える見込みだという。
Hallは、「インターネット上のID確認におけるVisaになる」という野心的な目標を掲げている。ID.meのデジタル名刺は、同社のサービスを導入している州であればどこでも利用できる。例えば、カリフォルニア州でDMVの登録内容を変更したユーザーは、同じID.meのデジタル名刺を使ってラスベガスのカジノホテルのMGMグランドにチェックインすることができるため、フロントデスクでの手続きが不要だ。
「ポータブルなログインは信頼されていない。信頼されるログインはポータブルではない」とHallは話す。
デジタルID業界に資金が流入するなかで、ID.meはコンシューマー向けビジネスで他社をリードしたいと考えている。同社は先日、Viking Global Investorsが主導したシリーズCラウンドで1億ドルを調達し、評価額は15億ドル(約1640億円)に達した。
このラウンドには、他にモルガン・スタンレー傘下のCounterpoint GlobalやPSP Growth、Lead Edge Capital、CapitalG、WndrCo、Willoughby Capital、BoxGroup、Moonshots Capitalが参加した。このニュースは3月18日のWashington Business Journalが最初に報じた。
ID.meの評価額は、同業他社に比べるとまだ小さい。例えば、法人向けID管理サービスを提供するオクタの時価総額は290億ドルだ。また、オクタが最近買収を発表した「オースゼロ(Auth0)」の買収価額は65億ドルだ。
Hallによると、政府機関向けサービスは、同社の事業の半分程度だが、ユーザー基盤を拡大するのに大きく貢献しているという。