小学生作家がオードリー・タンに聞いた「トランスジェンダーと多様性」


子供を尊重し、自立を促す教育を


うい父:自分自身の経験を踏まえてうかがいたいのですが、子育ての大切さについてはどのようにお考えですか?

オードリー:振り返ってみると、両親はいつも自分を一人の大人として扱ってくれていたと思います。自分が何か変えたいとか、抗議したいことがある場合にも、なぜそうなのかという理由を理論立てて説明すると、両親はいつもそのサポートをしてくれました。もちろん、ただ要求するだけで、合理的な説明がなければ受け入れてくれませんでしたが、いつも私の個人としての感情を尊重して、子どもが持っている世界観に干渉したりすることはありませんでした。

その年齢に叶った範囲で自立を促す教育をしていれば、子供は自然に成長していくものだと思います。そうしないと、その子が自分の世界観さえ育てられないような精神的に成長しきれない「子供大人」になってしまうのではないかと思います。



うい母:トランスジェンダーとしての葛藤や、それが原因で起きた不登校など、いろいろな問題があったと思います。そんなときに救いになったご両親の対応があれば、教えて頂けますか?

オードリー:自分の場合、自宅教育(ホームスクール)ということに関して、社会、学校、両親から理解され、支援されていたという点でとても幸運だったと思っています。中学校の先生が「インターネットを通して独自にリサーチをして学びたいと言う自分の気持ち」を理解してくれたので、そのお陰で両親の心配も減ったと思います。自分がやりたい形で学習することができたし、家族やコミュニティーからのサポートをもらうこともできました。

自分自身の体験から言っても、大人がさまざまな考えを聞く耳を持つことが何よりも大切なのではないかと思います。たとえば、思い込みや定義づけで勝手な判断をすることを避け、何を心配しているのかをお互いに話し合い、確認し合うと事態は必ずや好転してくるのではないかと思います。

うい:ありがとうございました。トランスジェンダーについても、いろいろと理解することができました。これからもオードリーさんから教えて頂いたことを基に、自分たちがやれことをやって行きたいと思っています。

オードリー:こちらこそ、貴重なお時間をありがとうございました。


オードリー・タン(唐鳳)◎現在中華民国のデジタル担当大臣を務める政治家及び、プログラマー。2005年、Perl6のHaskellによる実装のPlugを開発し、「台湾のコンピューター界における偉大な10人の一人」とも言われている。

秋元うい◎2010年に岐阜県で生れ、現在10歳の絵本作家。8歳のときに『しょうがっこうだいすき』を出版して10万部を売り上げるベストセラーとなる。

文=賀陽輝代 構成・編集=谷本有香

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